台湾有事になれば、数十万の人々が八重山諸島に避難してくる可能性も 課題多い「邦人退避」具体的な議論を

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今年、中台関係における緊張がこれまでになく高まった。しかも中台間で歩み寄りの姿勢が全く見えず、このままいけばさらなる緊張が生じるであろう。中国軍機による台湾の防空識別圏への進入は、11月には159機に上り、9月から3カ月連続で100機を超えたことが明らかになった。10月の196機からは減少したものの、ここ数カ月の数はこれまでにない規模になっている。

また、今年は国防関係者から台湾有事について具体的な言及が相次いだ。トランプ政権前で一時国家安全保障担当補佐官を務めたマクマスター氏は「北京五輪後に情勢がエスカレートする恐れがある」と指摘。インド太平洋軍のデービットソン前司令官は6年以内に中国が台湾に侵攻する恐れがあるとも述べ、台湾国防部も似たような発言を繰り返した。すぐに台湾有事が勃発するわけではないが、我々は今のうちから「邦人の退避」について真剣に議論を始めるべきだろう。

台湾有事といってもさまざまなシナリオが想定されよう。まず、中国は軍事的な侵攻する前の策として、電磁波攻撃やサイバー攻撃によって台湾社会を混乱させ、場合によっては蔡英文政権の弱体化を試み、台湾の親中勢力への支援を強化するというシナリオが考えられる。台湾の社会インフラ網を停止させることができれば、それだけで大きな混乱が生じることになる。また、具体的な軍事侵攻が始まったとしても、居住地域への攻撃は国際的非難を浴びる可能性があることからなるべく避け、台北や高雄にある国際空港や湾岸施設、政府庁舎や国防施設などを集中的に狙う可能性が高い。その際どうやって邦人を安全に退避させるかが大きなポイントになる。

台湾には2万人あまりの邦人が滞在している。攻撃が始まれば、空港は破壊されたり、大混乱したりすることから、邦人を退避させるといっても、台北の国際空港から成田や羽田、関空などを結ぶフライトを増やすというようなことはあり得ない。具体的には台湾当局の協力のもと、東部の湾岸施設を利用する形で台湾から110キロほどしか離れていない与那国島を目指すことになる。同じ八重山諸島を構成する西表島、小浜島、波照間島、石垣島なども退避先になる可能性もあり、3000メートル級の滑走路を有する宮古島隣接の下地島の重要性も高まるだろう。

実際に退避が始まれば、与那国島などに避難してくるのは日本人だけでなく、台湾に住む外国人、そして台湾人も退避してくることが考えられ、その人数は数十万になることも考えておくべきだろう。しかし、避難先の与那国島の人口は1600人ほどで、面積的にも受け入れには限界がある。退避が本格化することで八重山諸島が混乱に陥る可能性があるのだ。

滞在できるホテル客室の数にも限界があり、避難してきた人々を受け入れる施設や病院の建設、水や食料の備蓄などはこれから開始するのが現状だ。この事実を日本政府と国民は認識し、沖縄県の自治体とも議論を強化するべきだろう。

なお、有事が一度起きれば、全員が無事に退避できるわけではない。中国が海上封鎖している可能性もある。また、自衛隊が邦人退避活動を行うには、法的な問題点もあるだろう。平時の時から情勢を見極め、必要があれば早急に退避できる体制を国、各企業は強化しておく必要がある。

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