「日本はちょっと対策がユルい」コロナ禍の台湾のリアル。あえて現地に残った留学生に思いを聞いた

松田 義人 松田 義人

世界中の人々の生活を大きく変えた新型コロナウイルス。負の影響は計り知れず、今なお各国では行動に制限があり、また国と国とを行き交う海外渡航は、よほどの事情がない限りできない状態が続いています。

このため「海外に行って勉強をしたい」と思う若者は、その道を断念するケースが多いですが、そんな中、あえて大好きな台湾の留学を決行し、コロナ禍の生活に臆することなく日々を過ごす女性がいます。ま波さんという30歳の女性の方です。

ま波さんによれば「コロナ禍の影響で予定よりも大幅に帰国が延びている」とのことですが、現在どんな思いで過ごし、また台湾と日本での感染防止対策の違いなどについても聞いてみることにしました。

 

コロナ禍でのあえての台湾留学。どうして?

――ま波さんが台湾留学を決意した経緯からお聞かせください。

ま波:もともと台湾と不思議な縁があり、NGOの海外ボランティアに参加し、台湾の田舎町で2週間ほど過ごした経験がありました。この後、日本に帰ってからも台湾のことが頭から離れなくなりました。台湾の魅力は様々ですが、一番心を動かされるのは「台湾という国がつなぐ人の縁と、その温かさ」を感じられることです。

そんな思いがあったことと、自分自身の年齢のことなどもあり、コロナ禍ではありますが、思い切って台湾留学を決意しました。今年1月に渡台し、約2週間の隔離生活の後、3月から5月まで留学することになりました。

――当初、台湾は新型コロナ対策の優等生的な国として世界から評価を受けていました。それまでの台湾と、コロナ禍での台湾とでどんな違いがありましたか?

ま波:まず驚いたのは台湾の人々は、日本よりもはるかに厳しい生活をしていることです。移動制限や人数制限があり、外食も禁止されました。さらに徹底した罰金制度があります。

台湾は昨年、迅速な政府の対応が功を奏し世界的にも評価されるほどの感染者の封じ込めを実現したのですが、今年春にクラスターが発生し、一時感染が広がりました。

当初、私は日本での経験もあり「これは絶対広がるだろう」と思っていたのですが、さらに徹底した制限が行われ、一時8百人以上を超えた感染者数が、たった2ヶ月で2桁台まで封じ込めています。

これらのことから政府の感染防止対策に対する対応のスピード感、それと人々の意識の高さを感じました。コロナ禍でなければ、あまり気づけなかったことかもしれません。

 

コロナ禍の台湾留学のメリット・デメリット

 ――こういった制限ある中での台湾留学。メリットとデメリットとして、どんなことを感じられましたか?

ま波:メリットは、台湾でもオンラインでの交流が活発になり、多くの人と気軽にコミュニケーションを取れるようになったことです。また、個人的には自炊することが増え、スーパーマーケットに通うようになり、食材や料理に詳しくなったことですね(笑)。本来、台湾は外食が安く済むこともあり、自炊をしない人も多いのですが、コロナ禍を境に料理をする人が増えた、なんていう声もあります。

一方、デメリットは「台湾にいるのに、自由に地方に行けない」「オンライン授業になった」「金銭面での不安」の3つです。

台湾でも外出自粛が叫ばれていて、約2ヶ月半の間、台湾の地方部に遊びに行くことができず、食事もテイクアウトのみに制限されました。また、外では少しでもマスクを外すと罰金があるため、水を飲むことすら許されませんでした。

また、留学している身の上なのに授業がオンラインになってしまい、「これじゃ日本にいるのと変わらない」と思ってしまうこと(苦笑)。まぁでも、大好きな台湾にいられるだけでありがたいと思わなくてはいけませんが。

そして、お金。私の留学はワーキングホリデーも兼ねたもので、アルバイトをしながら生活しています。しかし、同じような立場の留学生には、コロナ禍で強制的にアルバイトがなくなった子もいて、簡単に帰国はできないですし、収入源はないしで苦しい生活を強いられるケースもあります。

 

 

帰国と滞在延長の複雑な思いの中で…

――それでもま波さんの場合、5月までの留学で帰国されるはずだったところ、さらに滞在を伸ばしています。この理由はなんだったのですか?

ま波:確かにさっき喋ったようなデメリットから「帰国」に気持ちが向かった時期はありました。

しかし、日本は新型コロナウイルス感染防止対策がちょっとユルいですよね。これも怖いし、旦那が「こんなに長い時間、台湾にいられる機会はないわけだし、おそらく一生に一度きり。だからできるだけ台湾の時間を楽しんだら?」と言ってくれて。それでしばらく滞在を延ばすことにしました。

正直、今も複雑ではあります。台湾の制限は厳しく「本当に素晴らしい」と思う反面、日本の様子を見ると、制限がユルい怖さがある一方、「自分がやりたいこと」を今の台湾よりは実現できそうな感じもあります。この点はもどかしいですが、とりあえず今はあまり深く悩まず、大好きな台湾での時間をできる限り過ごそうと思っています。

ま波さんのお話から、コロナ禍における台湾のリアルな状況と、その国で過ごす留学生の複雑な思いを知ることができました。

同時に、コロナ禍の今、気軽に海外の渡航ができるわけでもない上、各国の新型コロナウイルス対策も千差万別です。そんな中での海外留学は前向きに捉えれば、実は平常時以上に会得すること、考えることも多いかもしれないとも思いました。ま波さんのように、コロナ禍で海外留学を行っている人には、どうか苦境を楽しみに変えて、前向きな「学び」を得て欲しいとも思いました。

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