いざ、25年ぶり日本一へ!オリックス私設応援団員が語るCS突破への意気込みと涙涙の合併の歴史

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リーグ優勝を果たしたオリックス・バファローズ。その私設応援団も長年、外野席からエールを送り続けてきた。大阪近鉄バファローズからの流れをくむ「大阪紅牛會(こうぎゅうかい)」と、オリックス・ブルーウェーブからの「神戸蒼誠会(そうせいかい)」。紅牛會初代会長の和田益典さん(47)、現会長の谷口一雄さん(34)=いずれも大阪市、蒼誠会の後藤正樹会長(57)=神戸市=にクライマックスシリーズ、日本シリーズに向けた意気込みを聞いた。また、球団合併時の苦悩や合同で活動するまでの経緯、多くのファンに愛されるチャンステーマ「丑男」の誕生秘話、オリックスの応援歌が難しい理由…などなど幅広いテーマで質問をぶつけた。

涙の合併、そして団結

球団合併の話が持ち上がった2004年。両チームのファンは合併反対のデモ行進をするなどし、和田さんらも球場で署名活動を行うなどして奔走した。

「正直、思い出したくもない。精神的にも体力的にも厳しかった」

反発もむなしく、9月に悲劇が現実になった。その月の27日、ブルーウェーブと近鉄による最終試合がYahoo!BBスタジアム(現在のほっともっとフィールド神戸)で行われた。名残を惜しむファンがつめかけ、球場外にまで人があふれた。試合後も両チームのファンは往年を懐かしみ、応援団を囲んで涙ながらに応援歌を歌い続けた。そんな中、当時ブルーウェーブの応援団だった「神戸青波連」のメンバーのもとへ和田さんが近づいた。青波連には後藤さんもいた。両応援団は以前から親交があったため、自然と「また連絡を取りましょう」という約束をした。

それでも「応援するチームがなくなったショックは相当なものだった」と和田さん。脱退するメンバーも相次ぎ、野球を観ることすらやめた人もいた。後藤さんも「抜け殻のような日々」と振り返る。年が明け、両応援団は話し合いの場を持つことに。互いに愛するチームを失った悲しみを分かち合い、一緒に活動しようと誓った。和田さんのもとに、お世話になっていた共通の知人を介して仰木彬さんから「活動を続けてほしい」と言われたことも原動力になった。着用する法被は元のチームの色(赤と青)のまま、それぞれ活動することに。「それぞれ背負ってきたものを大切にしよう」という思いだった。ブルーウェーブ側は「神戸蒼誠会」になり、新体制が発足した。

名曲「丑男~COW BOY~」誕生秘話

05年の開幕にあたって和田さんが作った選手別応援歌は、大西宏明選手と塩谷和彦選手(後のBsメインテーマ)のもの。さらに「新しい球団としてのチャンステーマも作りたい」と思った。だが、歌詞もメロディーもなかなかしっくりくるものが浮かばない。いよいよシーズン開幕が近づき、「自分の思いを素直にぶつけてみよう」とふっきれた。そこで完成したのが「丑男~COW BOY~」だった。

 熱き情熱 紅(あか)く染まり 蒼き稲妻 輝く
 ここで立ち向かえ戦士達
 悲しみ乗り越え突き進め
 真紅と蒼の魂を 炎と燃やして攻めろ

勇ましくも哀愁のあるメロディー、チャンステーマなのに「悲しみ」という言葉が入る歌詞。両球団のカラーも直接的に表現した。応援団のメンバーに初めてこの曲が披露された場で、後藤さんは「涙が出そうになった」と振り返る。「悲しみを乗り越えて一緒になって戦おうという気持ちがストレートに伝わってきた」

その後も年を追うごとに新しいチャンステーマは増えているが、丑男は逆転のチャンスなどここ一番にかかる勝負曲だ。球場で前奏のトランペットが流れると拍手がわき起こる、ファンに愛される1曲となった。

オリックスの応援歌はなぜ難しい?

「かっこいい」「渋い」と、他球団ファンからも人気が高いオリックスの応援歌。だが、その複雑さも群を抜いている。前奏があるのは当たり前、「AメロBメロ」「サビ」「ブリッジ」…。何度も外野席に通って歌わないと、なかなか身につくものではない。こんなにも複雑化しているのには明確な意図があるという。現在「応援統括プロデューサー」として作曲や応援スタイルの提案、演奏指導などを行う和田さんはこう話す。

「関西の人気球団(阪神)に比べて注目度も低いし、合併後はBクラスに低迷している期間がほとんどというチーム。ファンの皆さんに覚えて歌う楽しさを知ってもらいたい」。難しいからこそ努力して覚えて、みんなで声を合わせて歌う楽しさがあるというわけだ。

そんな和田さんが作る応援歌は、トランペットで演奏する側にとっては、音楽的にかなりハイレベルな技術が求められるようだ。例えば吉田正尚選手の応援歌。「幾多の困難乗り越え」という歌詞の「乗り越え」の部分は、一気に高音に上がる「オクターブ跳躍」が取り入れられており、正確に音を出すのは難しい。オールスターゲームなどで他球団の応援団と一緒に演奏する機会があるが、どの曲でも驚かれるという。谷口会長は「年々、難しくなってきてます」と苦笑。オリックスの団員たちは和田さんから指導を受ける以外にも、スタジオを借りたり近所の河原に赴いたりして必死で練習している。「難しい曲ではあるけれど、ここまでの曲を吹けるのは光栄なこと」

コロナ禍、それでもエールを送る

昨年からの新型コロナ禍で、応援団は大幅に活動を制限された。それでもYouTubeでオンライン演奏を実施し、試合の流れに合わせて選手らの応援歌を吹くなどしてファンを盛り上げた。球団と協議を進め、今シーズンからは録音した応援歌が球場で流れるようになった。声は出せないが、団員は手拍子をリードするなどして球場を盛り上げている。

また新しく横断幕も作成。山本由伸選手、吉田正尚選手のものに加え、「この苦況を乗り越え 叶うべき夢の先へ」としたためた。

Bクラスに低迷した期間を乗り越え、リーグ優勝を成し遂げたバファローズ。CSを戦えることに谷口会長は「いちファンとしてすごくうれしい。頂点を目指して精いっぱい応援したい」と意気込む。また、球場で流れる応援歌が全国ネットの放送にのることもひそかな楽しみだという。「応援歌がかっこいいな、と思ってファンが増えてくれたらこんなにうれしいことはありません」

10日に開幕するCS。例年と違う形ではあるが、紅牛會と蒼誠会は外野席からチームにエールを送る。叶うべき夢の実現はすぐそこまで来ている。

(まいどなニュース/神戸新聞・小森 有喜)

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