「オリックスファンです!」「…なんで?」日本一から四半世紀 ファン心理を描く漫画に共感が止まらない

竹内 章 竹内 章

1996(平成8)年10月24日を覚えていますか。そう、仰木彬監督率いるオリックスが長嶋巨人を4勝1敗で下し、球団として初、前身(阪急ブレーブス)からは19年ぶり4度目の頂点に立った日です。そして四半世紀を経た今季、猛牛の快進撃とともに、ファン心理を描いた創作漫画が話題です。

明けない夜はない、春の来ない冬はない。そう信じたファンにもたらされた11年ぶりの交流戦優勝、そして37年ぶりの11連勝。シーズン後半戦、チーム同様に漫画にも大注目です。

 

TwitterユーザーのNAKATA(君)(@NAKATA55795234)さんが描くオリックスファン(オリファン)の漫画。新参のA川と、生粋のファンである大学生C一郎&高校生B里兄妹の悲喜こもごもがこれでもかと描かれます。 

パ・リーグで長く栄光から遠ざかっているオリックス・バファローズ。リーグ優勝、日本シリーズ進出、日本シリーズ優勝のいずれもあの1996年が最後です。当時はオリックス・ブルーウェーブ、後にメジャーリーガーとなる長谷川滋利、イチロー、田口壮、野村貴仁というそうそうたる顔ぶれでした。しかし、近年はシーズン勝ち越しとクライマックスシリーズ進出も2014年が最後と苦しいシーズンが続いています。

ゆえに、でしょうか。交流戦優勝の吉報にC一郎とB里はどう喜べばいいのか、分かりません。「こういう時ってどうしたら良いんでしょうか…?」と戸惑いを隠せないB里。漫画は、こうしたオリファンの繊細な胸中をリアルに描写。采配をめぐって口論するファン同士の仲裁に入ると思いきや「ただでさえ少ないオリファン同士でけんかするのはやめろ!」と本音で諭すC一郎、「バッファローズファンなんだあ。珍しいね」と言われても、名前に「ッ」を入れた相手の間違いを指摘できずモヤモヤするB里、タクシーの運転手さんと野球話で盛り上がっていたのに、オリファンと告げると一呼吸おいて「なんで」と聞かれるA川。怒涛のエピソードに、切なさがこみ上げます。

口には出さねど、つらい日々だったんですね…。こうなったら今年の日本シリーズは、関西ダービーで盛り上がりましょう!新型コロナウイルス禍前は年間20~25試合は観戦していたというNAKATA(君)さんに聞きました。

―オリックス・バファローズとの出会いは

「2008年くらいに京セラドーム大阪でした。あまりのお客さんの少なさが衝撃でした。野球が好きで、いろんな球場で観戦しましたが、ここは審判のコールが鮮明に聞こえるし、何ならボールがキャッチャーミットに収まる音までキレイに聞こえる、それくらい人がいない。いくら何でも人気なさすぎだろ!って思いましたね」

―それが今では虜に…

「外野の応援席は結構な数のファンがいて、みんなすごく熱いし楽しそう。歌ってる応援歌もめちゃくちゃ格好良いんですよ。『うわぁいいなぁコレ』と、その日から気になりだして。数年後にはファンクラブに入って今に至ります」

―1996年の日本一は

「スポーツに興味のない小学生で、リアルタイムの記憶はありません。でも、大人になって当時の映像を見て、オリックス・ブルーウェーブの存在が大震災後の神戸の人たちにとってどれだけ希望の光だったのかを強く感じました。スポーツ選手へのインタビューで、「ファンを元気づけたい」「勇気を与えたい」という言葉を聞きますが、あぁ、あれはこういうことなのだと」

―今年の強さはやはり投手にあるのでしょうか。

「一ファンの考えですが、野球が楽しいと思える環境じゃないかと。これまでは、勝たなきゃいけないというプレッシャー→体が硬くなる→攻撃では打てない、守備では投球が定まらない・エラーが出るという負の循環を感じました。でも今年は選手が一度ミスしても見限らない、選手皆にチャンスを与える、という起用法があるためか、今までなかったプラスの循環を感じます。中嶋監督は就任会見で「楽しいものなので、野球というものは」とコメントしていました。その思いを選手に伝えてくれたことが何よりうれしいです」

―オリファンはどんな人たちですか

「切り替えのうまさでしょうか。球場でもネットでも、酷い負け方した後は皆ゲッソリした雰囲気で「もうしばらく野球はいいかな…」って言ってるんですけど、翌日には「今日は勝てる気がする!」と私も含めて同じ顔がそろっているんですよね。痛い目みても懲りない面々とも言えるんですが(笑)」

―でも今シーズンは皆さん、楽しくて仕方ないでしょうね

「いやもう信じられないの一言です。昨季は開幕してすぐ6タテされて、その後もありとあらゆる負け方を見せられて、後半調子は上げたけど、ぶっちぎりの最下位。今季も、「あわよくばCS行ってくれたらうれしいなぁ」ぐらいだったんです。それが3年ぶりの貯金、交流戦優勝、11連勝って今まで望んでも望んでも手に入らなかったものが急にいっぺんに降ってきて…。他球団ファンも困惑したと思うんですが、オリファンが一番困惑している気がします」

―漫画のネタの一本一本が濃いです

「A川はオリックスを応援し始めた頃の自身です。熱狂的ファンのB里、C一郎は球場やネット上のオリックスファンの意見を参考にすることもあります。自分では思いつかないようなとんでもない考えがあったりするんで…。かなわないな~と思ったファンの人は、昔、現地観戦で隣に座った40代くらいの男性でした。「昨日は救急車で運ばれて検査で来れんかったけど、今日は医者の目盗んでなんとか来れたわ」と。コレはとても勝てないと(笑)」

―後半戦が始まりました

「お礼を言わせてください。監督、コーチの方々、裏方の皆さん、球場関係者の方々、そして選手の皆さん、勝つ喜びをファンに思い出させてくれて本当にありがとうございます。2年前、岸田コーチが引退の際に言われた「これからオリックスは強くなります。長い長いトンネルを抜けます」という言葉を思い出さずにはいられません。ここから先、好調ばかりではないかと思います。負けが込んでチーム全体が暗くなるかもしれません。それでも我々は、球場から画面の前から心の声援を送ります」 

「漫画を読んでオリックスファンになりました」という反応が寄せられたというNAKATA(君)さん。コロナ禍で生じた空き時間に始めた創作漫画がファンに共感を呼んだことは、交流戦優勝に匹敵する喜びだそうです。「今でも信じれられません。すごい大掛かりなドッキリという可能性もまだ捨ててないです」と取材にも半信半疑の様子でした。

なお、セ・リーグで気になるチームは、「昔、愛知県に住んでた縁があるので、中日です」。当時、ドラゴンズファンの同僚と野球談議をよくしていたそうですが、その人もまたネガティブなファンで、「昨日もひどい負け方でさぁ…」と2人でストレスフルな会話を楽しんでいたそうです。 

NAKATA(君)さんの漫画はピクシブで公開中です。→https://www.pixiv.net/users/52494346

NAKATA(君)さんのアカウントはこちら→https://twitter.com/NAKATA55795234

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