マリトッツォの次はこれ!?貝殻形でパリパリ食感の「スフォリアテッラ」にブームの予感

野崎 泉 野崎 泉

今年、大ヒットしたスイーツNo.1といえば、イタリアの郷土菓子「マリトッツォ」。ところで現在、マリトットォ人気からイタリアの素朴な郷土菓子への注目が高まっており、なかでも「スフォリアテッラ」なるお菓子が脚光を浴びていることをご存知だろうか。思わず舌をかみそうな名称だが、貝型のようなルックスがなんともキュート!『マツコの知らない世界』で紹介されたことで一気に認知度が高まり、全国のデパートの催事でも行列となっているそうで、これはポスト・マリトッツォの予感!?

さっそく食べてみたところ、パイとはまた違った、独特のパリパリした食感がたまらない。中に詰められた、オレンジピールとシナモンが香る、クリームとのハーモニーを楽しむお菓子である。イタリアの修道院発祥ともいわれ、マリトッツォと同じく、素朴で親しみやすいテイストが魅力といえる。

マリトッツォは人気すぎて、「謎トッツォ」も続々登場

一応おさらいしておくと、マリトッツォは丸いパンにクリームがこれでもかとばかりに挟まれた構造が特徴。イタリアンスイーツの専門店のみならず、今やカルディ、成城石井、山崎製パン、コンビニ各社など大手も製造に乗り出し、すでに何度か食べたことがある人も多いのでは?

日本では80年代頃からジェラート、ティラミス、パンナコッタといったイタリアンスイーツブームが定期的にあったが、これほどの盛り上がりは久々といえる。今や便乗した「もちトッツォ」「どらトッツォ」など和風アレンジしたものや、お菓子ですらない「寿司トッツォ」なんてものまで登場し、カオスとなっている状態だ。

バリスタの森崎祐希さんによる、日本初の専門店が話題に

福岡にある「オスピターレ」はイタリアンカフェであり、日本初のスフォリアテッラ専門店でもある。イタリアから冷凍の状態で輸入したものをリベイクして提供するお店が大半な中、「オスピターレ」は自社のセントラルキッチンで生地作り、クリーム作りから、成形までを一貫して手作業で行っているという。オーナーでバリスタの森崎祐希さんにお話をうかがってみたところ、デパートの催事では1週間で1~2万個、場合によってはそれ以上売れることもあるほどの人気っぷりとか。そもそも、惚れ込んだ理由はなんだったのだろう?

「2005年にバリスタとして、コーヒーの勉強のためナポリへ研修に行ったところ、多くの店の軒先でこのスフォリアテッラが売られていました。17世紀からつくられている歴史あるお菓子で、ナポリではマリトッツォよりもむしろ、庶民に親しまれている存在です。パイとはまた違うパリパリとした軽やかな食感で、これは日本人にも受け入れられると確信しました。バリスタとして、コーヒーの文化とともに、ぜひ日本に広めたいと思いましたね」

パリパリ感のキープには苦心の末の企業秘密が

巻物状になった生地を金太郎あめのようにカットし、貝殻のような形に整え、クリームを詰めてフタをしたのち、低温で1時間半、じっくり焼き上げていく。最も苦心したのは、やはり特徴的なパリパリ感をいかにキープするか、だったという。

「珍しいお菓子を見つけたら、身近な誰かとシェアしたくなりますよね。そういうギフト需要を考えると、2日はパリパリ感が持続するのが望ましいと、工夫を重ねました。イタリアから輸入したものだと、焼き上げてから、パリパリが持続するのはせいぜい4、5時間なんです。詳細は明かせませんが、水分を可能な限り、抑えるところに秘訣があります」

一過性のブームではなく、長く愛されるお菓子に育てたい

今後は食べてみたい人すべてにいきわたるよう、生産量を上げていくことが森崎さんの当面の目標とか。一方では、一過性のブームにはしたくないという思いもあるそうだ。

「マリトッツォはシンプルで素朴なお菓子なので、簡単につくることができ、アレンジもしやすかったため、あっというまにブームが広がりました。しかしながら、そのいずれもが本質を伝えているかというとそうではなく、かたちだけ真似たようなものも多かったため、人気が翳りを見せるのも早かった。そうではなく、歴史あるお菓子ならではの本質を伝えることで、スフォリアテッラをいずれは地元福岡の人や、子どもたちにもおやつとして気軽に食べてもらえるような、息長い存在に育てていくのが目標ですね」

「オスピターレ」の勢いを目の当たりにし、すでにスフォリアテッラの自社製造に動き出している同業者もいくつかあるとのこと。果たしてこれからどのような展開や進化を遂げていくのか……今後も見守っていきたいと思う。

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