脳卒中のリハビリで効果的な「運動療法」 発症後にすぐに行う理由と注意点とは 医師に聞く

ドクター備忘録

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 脳卒中を発症すると、身体機能の回復を促すために様々なリハビリが行われます。その一つである運動療法について、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。

――運動療法は脳卒中の発症後、いつから行うのでしょうか?

早い時は、発症したその日から始めることもあります。例えば、半身麻痺になると動かなくなった方の手足は次第に固くなってしまうのです。それを防ぐためにも、早期から積極的に動かすことが重要です。

――それでは発症直後、病室で行うということでしょうか?

はい、理学療法士の指導により行います。半身麻痺の場合はベッドから起き上がることもできません。そこで、まず座る練習をします。座って体幹の筋力を使い、バランスを取る訓練です。そして、動かせる足1本で立つ練習も行います。慣れてきたら、麻痺がある足も使いながら立てるように。動かせる足が丈夫な人ほど、早く歩けるようになる傾向がありますね。

――その後、病室から出られるようになると、どんな訓練をするのですか?

作業療法士が担当し、手の訓練を行います。例えば、ボールを掴んで別の場所へ移すという精密な動きを繰り返します。また、一人でトイレに行けるように一連の動きを練習するなど、実際の生活動作に繋がるトレーニングを進めていきます。

――運動療法はどのくらいの期間行うのでしょうか?

患者さんの状態にもよりますが、短い人で1か月、長い人は3か月から半年程度行うことが多いですね。手術を受けたかどうかよりも、最終的な後遺症の程度によって変わります。手術をしなかった人でも重い後遺症が残れば、リハビリ期間は長くなります。

――運動療法を行う上で気をつけることはありますか?

運動前には必ず体調確認を行うこと。脳卒中を発症した後は、座るだけで血圧が下がる場合もあります。血圧が不安定だったり、熱があったりする時は運動を中止しましょう。そして運動開始後も、こまめに血圧を測定することが大切です。

――運動中の転倒にも注意が必要ですね。

そうですね。転倒を予防するためにも、患者さんのレベルに応じた訓練を段階的に設定しています。また、運動中以外にも病室からトイレに行く時に慌ててしまい、転倒するケースも多いのです。動けるようになったからといって過信せず、看護師などスタッフにサポートを頼むようにしてください。

◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、脳神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科

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