先ごろ、東京駅構内の石材の中に見つかった化石が、SNS上で大きな注目を集めた。
「東京駅構内のecute Tokyoの入口近くの柱にカニの化石を見つけました。石材での報告は海外ではありますが、国内では初かと思います。」
とその発見を報告したのは普段は精神科医として勤務しているひとみしり犬さん(@kuta0041378)。
石材からカニの化石が見つかるのは国内ではたいへん珍しいことなのだそう。ひとみしり犬さんの投稿に対し、SNSユーザー達からは
「東京駅構内柱のカニ化石をチェックしてきました(^-^)/…感動です!ホント、よく見つけましたね!さすがです。エジプト産の古第三系石灰岩だと思います。」
「アンモナイトとかは、日本の駅でも割とあるけれど、カニは、知りませんでした!!
よく観るとかわいいですね」
「今、会社帰りに見て来ました。
めちゃくちゃ癒されました。
ありがとうございました!」
など数々の称賛のコメントが寄せられている。
妻の買い物の間に柱を眺めていたら…
ひとみしり犬さんにお話をうかがってみた。
―本業は精神科医でいらっしゃるとのことですが、化石についてはどのようなご活動をされているのでしょうか?
ひとみしり犬:小学生のころから石材の中の化石の観察を趣味で続けています。アンモナイトや貝類などが多いのですが、同じように殻をもつカニの化石が石材に含まれていないかと数年前から考えていました。調べたところスペインのセゴビアという街にはあるようでしたが、さすがに遠くて一人で行く自信はないし、かと言って「カニの化石見に行かない?」と誘っても誰も来てくれないだろうしで実物を見るのは諦めていました。
―では今回の発見はたいへん貴重なものなんですね!この石材はどのようなきっかけで発見されたのでしょうか?
ひとみしり犬:化石は妻の買い物に付き合っていた時に見つけました。妻がお店に寄りたいと言うので「じゃあ化石がないか柱でも眺めてるか」と待っていたところ、たまたま目に入りました。興奮を抑えて写真を撮ったつもりでしたが、妻からは「髪が逆立って見えるくらい興奮しているのが分かった」と言われました。
―これまでのSNS上の反響についてご感想をお聞かせください。
ひとみしり犬:ここまで興味を持っていただけるとは思っていませんでした。古生物学や建築石材に興味を持つ方が増えてくれると嬉しいです。
およそ3000万年前に絶滅したカニの祖先
カニの化石に詳しい、岐阜県瑞浪市化石博物館の学芸員、柄沢宏明さんによると、この化石は「ハルパクトカルシヌス」か「パレオカルピリウス」か「パレオザソソプシス」というカニの祖先。およそ5600万年前から3390万年前までの始新世に栄えた。地中海沿岸を中心に、暖かく浅い海で生活していたが、漸新世(およそ3000万年前)になり地球の気温が急激に低下すると、環境の変化についていけず絶滅。現代には、「ユウモンガニ」と、生息環境により毒を持つこともある「アカモンガニ」の2種のみが形質を受け継いでいるという。
エジプトからイタリアにかけて産出される石灰岩に含まれ、状態の良いものは人気が高い。ただ、特徴的な渦巻きや隔壁で見つけやすいアンモナイトなどに比べ、化石と気付かれず見落とされることも多いといい「よく見つけられましたね!」とも。
ちなみに、このカニの化石が見られるのは場所は東京駅構内の「ごまたまご(銀座たまや)」左側辺りとのこと。
ご興味のある方はぜひ足を運んでいただきたい。
ひとみしり犬さん関連情報
Twitterアカウント:https://twitter.com/kuta0041378