愛猫が楽しめ、人間も快適に暮らせる家に住みたいと思ってもペット共生住宅を建てるのはなかなか難しい場合も…。しかし、賃貸でもDIYによって部屋を改造してみると、互いに満足しながら過ごせる空間を生み出すことができます。2LDKの賃貸に人間2人と猫2匹で住んでいるピノワルド工房さん(@pinowald)は、天井や壁を傷めずに柱を設置できる「ディアウォール」を活用し、リビングに猫用アスレチックを制作。人と猫が共存できる空間を手に入れました。
2匹の愛猫が共存できるようにDIYでリビングを改造
ピノワルド工房さん宅で暮らすのは、三毛猫のつむぎちゃんとサビ猫のいとちゃん。
つむぎちゃんは生後数週間の頃、カラスらしき生き物に両目を突かれ、右目でかろうじて光を感じられる状態で保護された子。その後、視力を失い、盲目となりましたが、目が見えないことを感じさせないほど活発な姿をたくさん見せてくれています。
ピノワルド工房さんは愛猫たちが快適に共存できるよう、猫のアスレチックをDIY。「猫は上下運動が好きで、縄張り意識が強い動物。いとの成長を見ていて、同じリビングで過ごすにしてもほどよい距離感が必要だと思いました」
そこで、天井高を測り、資材屋さんにてカットしてもらった「ツーバイ材」を、メルカリで購入した「ディアウォール」を使って固定。
キャットステップの代わりに選んだのは、CAINZの木箱。「猫に楽しんでもらいながら物を収納したり、好きなグッズを陳列できたりするのもよい点です」
頂上部分には、Amazonで購入した吊り橋を設置。
この吊り橋は、つむぎちゃんのお気に入りに。一日中揺られている日々が2カ月ほど続いたのだとか。「いとのほうは最初、吊り橋を怖がっており、慣れるまでに半年以上かかりました。でも、今ではお互いに譲り合いながら、吊り橋ブームを繰り返しています。長く使ってくれているので作ったかいがありました」
壮大な猫用アスレチックは既存のカラーボックス(テレビ台)とIKEAのトロファストで固定されているため、耐震性もばっちり。
「震度5の地震が発生した時も大丈夫でした。また、アスレチックはもしもの時のことを考え、落ちても愛猫が怪我をせず、飼い主が手を伸ばせば届くよう、最大の高さを2mにしてあります」
障がいの有無に関係なく「猫らしく」楽しめるアスレチックを
愛情満点なこのアスレチックには、視覚障がいを持つつむぎちゃんへの配慮も取り入れられています。
ピノワルド工房さんはもともと設置していた子猫・シニア向けのキャットタワーを参考に、つむぎちゃんも安全に楽しめるよう、段差の高さを調節。左のエリアはあえてステップを低くし、つむぎちゃん専用ゾーンになるように工夫しました。
「とはいえ、両方から移動できる回遊式にしないと猫は面白くないと思ったので、右のゾーンをどうするかが最大の難所でした。作り終えた後は、つむぎが右ゾーンを歩けるのか心配でした」
ところが、つむぎちゃんはいとちゃんの行動を音で聞き、いつしかアスレチックを完全制覇。ピノワルド工房さんの心配は杞憂に終わりました。
アスレチックを作った後は活動量が増えただけでなく、いとちゃんがつむぎちゃんにイタズラを行う回数が減り、当初の目的通り、2匹は快適に共存できるように。「遊べるエリアが分散されたことで鉢合わせすることが少なくなり、ストレスが減ったように思います」
工夫をちりばめた手作りアスレチックは体と心、両方の健康を守る贈り物となったようです。
大家さんの許可を得てDIYで脱走防止対策
アスレチック以外にも、ピノワルド工房さんは猫と人が快適に暮らすために様々なものをDIYしています。
例えば、ベランダにはワイヤーネットを取り付け、脱走を防止。
これは大家さんと相談し、原状回復を約束に制作したもの。「つむぎはワイヤーネットを登っていくので、上にネズミ返しならぬ猫返しを付けました」
また、窓には網戸破れ防止策として突っ張り棒とワイヤーネットを組み合わせたものを設置。
トイレの臭気予防としては木枠やカラーボックスを活用した「つむぎ露天風呂」や「つむぎカフェ」を制作するなどして、遊び心あるDIYも楽しんでいます。
「DIYの良さは、高さなどを調整できるところ。色も変えられ、原状回復や処分も比較的容易なので愛猫が興味を持ちやすい、その子に合った物作りを考えてみてほしいです」そう語るピノワルド工房さんは賃貸でも猫と人が暮らしやすい空間を作りたいと考えている人に対し、大家さんの理解を得ながら、退去時に原状回復できる範囲でDIYを楽しんでほしいと訴えかけます。
「我が家の2匹は幸いにも爪とぎをお気に入りの場所で行ってくれていますが、爪とぎ対策を考えることも大切です。賃貸はどうしても一軒家より狭いですが、ホームセンターで店員さんに相談したり、DIYアドバイザーがいるお店を訪れたりして上空の空間を有効活用できる方法を見つけてみてください」
なお、DIYをする際は耐久性を重視。不安がある初心者さんはカラーボックスを活用したり、柱を一本固定したりすることからチャレンジしてみるのもありです。
「現在、自分は『オンリーにゃんず』という障がい猫の写真展を開催し、32匹の猫たちの個性を伝えています。長く一緒に暮らす猫は家族。年を重ねて障がいを持ったり衰えたりしたとしても一緒に遊んだり暮らせたりする住まい作りのアイデアを考えてみてください」
今後、愛猫の興味や身体能力の移り変わりによりDIYの形は変わっていくかもしれないけれど、猫生と人生を共有し、豊かな暮らしを楽しんでいきたい――。そんなピノワルド工房さんの言葉を聞くと、猫も人もわくわくできるDIYに挑戦してみたくなります。
猫を取り巻く環境の変化やご長寿猫の増加により、これから先、猫と人が快適に暮らせる共生住宅の形はより多様化していくはず。様々な家の情報を参考にしつつ、ぜひ我が家に合う工夫を見つけ、取り入れてみてはいかがでしょうか。