ワンルームマンション税に遊漁税、ミネラルウォーター税も検討… 地方の独自課税に拍車がかかるワケ

村山 祥栄 村山 祥栄

宮島に行きたきゃ訪問税を

2021年7月、厳島神社のある宮島(広島県廿日市市)に新たに『宮島訪問税』を導入することに総務省が同意をした。現在、京都市では別荘所有者に対して課税する「別荘税」、ミネラルウォーター生産量全国1位の山梨県ではミネラルウォーターに課税する「ミネラルウォーター税」の検討が進んでいる。昨今で言えば、世界的にメジャーな税である宿泊税が東京に続き、大阪府、京都市、金沢市、倶知安町(北海道)、福岡県、福岡市、北九州市と続々と導入されている。地方自治体が独自に課税するこうした地域課税が自治体間で密かなブームになりつつある。

自治体にとって新税がおいしいワケ

こうした法定外新税と呼ばれる独自課税が検討される背景はいうまでもなく自治体の財政難によるものからだ。新税を導入しなくても既存の税収アップを目指したほうが良さそうにも思うが、そこには地方財政のカラクリがある。地方財政というのは、国が全体をコントロールし、財源が不足する自治体には地方交付税という資金を配り、全体の均衡を図っている。

その為、自治体の税収が増えるとその分交付税が減らされる。もう少し厳密に言えば100円増えると交付税が75円減らされる。つまり100円増やしても実質は25円しか増えないため、自治体にとっては税収を増やすメリットが小さい。その一方で、昨今導入される法定外新税は、そうしたルールが適用されない枠の外にある制度のため、全額が収入となる。さらに、これらの新税のほとんどは市民以外を納税者にしている為、議会での合意を得やすいことも大きい。こうしたことから、各自治体は積極的に検討を進めているというわけだ。

ワンルームマンションにだけ課税?

全国を見渡すとこうした地方独自の課税はなかなかユニークなものが多い。

一番メジャーなのは宿泊税に代表される観光税で、福岡県太宰府市では太宰府天満宮を車で訪れる観光客に対して「駐車場税」、岐阜県では乗鞍岳を訪れる登山客に対して「乗鞍環境保存税」、沖縄県座間味村では島に入島する観光客を対象に「美ら島税」、富士河口湖町では河口湖の釣り人に対して「遊漁税」という負担を求めている。これらの多くは周辺環境の整備保全を目的とし、金額も大きくない為、納税者からも一定の理解を得られている。かつては京都市で廃止に追い込まれた観光寺院の拝観料に上乗せして課税する「古都税」というのもこの派生形だ。

変わり種で言うと、熱海市の別荘所有者に課税する「別荘等所有税」、東京都豊島区が増えすぎたワンルームマンション対策として導入した「狭小住戸集合住宅税(ワンルームマンション税)」、大阪府泉佐野市の関西空港を訪れる人に課税する「空港連絡橋利用税」などがある。

コロナ禍で急激に自治体の財政は悪化しており、最近は多くの自治体関係者から「財源確保の一策としてこうした新税の検討を」という声も聞く。

あなたの街に突然新税が登場する日も遠くないかもしれない。

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