追悼…さいとう・たかをさんが亡くなっても賃貸物件「ゴルゴ十三」はなくなりません 所有オーナーが断言

山本 智行 山本 智行

吉本所属で芸人と歯科医の二足の草鞋を履く、パンヂー陳こと陳明裕歯科医師が、9月24日に膵臓がんのため死去した漫画家のさいとう・たかを(本名・斉藤隆夫)さんを悼んだ。陳歯科医はゴルゴ13が好き過ぎて、大阪市淀川区に所有する賃貸物件のテラスハウスに「ゴルゴ十三」と名付けたほど。同歯科医が勤務する歯科医院を訪ね、改めてゴルゴ13への愛を聞いた。(聞き手・山本 智行)

--「ゴルゴ13」の作者、さいとう・たかをさんがお亡くなりになりました。陳さんも悲しんでいるものと思って訪ねてきたのに、何で無視するんですか?

陳歯科医:「あいさつは親しみ合った人たちの間でかわすものだ」。ゴルゴ13の第15巻で、デューク東郷がそう言ってますので、そう親しくもない山本さんとは挨拶しません。急に診療室に何しに来はったんですか?せっかくやから、歯でも抜きまくりましょか?

--歯は抜かんでいいです。陳さんがゴルゴ13好きというのは知ってますから。

陳歯科医:寂しいですよね。謹んでご冥福をお祈りします。実はそのニュースを知ったのが、某一般紙の記者の方からの電話だったんです。診療していたら、いきなり「さいとう・たかをさんの訃報についてコメントを頂きたい」という電話でビックリしました。

--えーっ、何でまた。陳さんなんかにコメント聞いてどうするんですか!?何で、そんな取材が来たんですか?

陳歯科医:“なんかに”とは、失礼な!でも、僕もそれは疑問だったんですけど、どうやら山本さんが書いた冷やかし記事のせいらしいんですよ。

--まさか、ほんまかいな!? 『ゴルゴ13ならぬ「ゴルゴ十三」 嘘のような本当の賃貸物件…オーナーに直撃』(まいどなニュース、2018年10月29日公開)の記事ですか。

陳歯科医:はい。女性記者だったんですが「十三駅から徒歩 “13分”って本当ですか?」とか聞いてくる内容が、ほぼあの記事のままでしたから間違いないです。

十三駅 大阪市にある阪急電鉄の駅。神戸本線、宝塚本線、京都本線の3線が集結、大阪梅田駅と並んで同電鉄の主要な駅。

--まあ、確かに“ゴルゴ13”が好き過ぎて、自分が所有する賃貸物件に「ゴルゴ十三」って名付けたくらいですから、取材されても不思議はないですね。でもこれって、商標権侵害とか大丈夫なんですか?

陳歯科医:うちの物件名は、あくまで“ゴルゴ”ですから。“ゴルゴ13”では無いですし。建っている場所がたまたま “十三”という地域にあるので、場所がわかりやすいように「ゴルゴ十三」と表記しているだけで、もし、これがアウトなら“TIMのゴルゴ松本さん”もアウトになっちゃいますよ。

--でも、窓やドアに弾痕のシール貼ったりして、わざとゴルゴ13感を漂わせてませんでしたっけ?

陳歯科医:デューク東郷も94巻で「それはそれ、これはこれだ。ルールさえ守れば、何をしようと勝手だ」と言ってることですし、そこは大目に見てください。っていうか、あのシールですけど、せっかく僕が貼ったのに、入居者の方には、ちょっと恥ずかしいみたいで、全部剝がされてましたから。

--気持ちはわかる気がします。アレ、今、気づきましたが、さり気なく院長室にもゴルゴ13のフィギュアがあるんですね。でも、何で山ほど種類があるゴルゴ13フィギュアの中からこんなパンツ一丁のデューク東郷を選んだんですか?

陳歯科医:デューク更家じゃないんですから、デューク東郷がギラギラの柄物のボクサーパンツじゃ、変でしょ?!やっぱり、この白のブリーフのイメージですよ。高倉健さんがモデルということですからフンドシでもエエかも知れませんけどね。

世界情勢や事件の知識は「ゴルゴ13」で勉強

--いやいや、僕が言ってるのは、パンツの種類じゃなくって、いでたちです。普通、ゴルゴ13のフィギュアを、1つだけ飾るならスーツ姿でアーマライトM16でも持っているのを選ぶでしょう!?

陳歯科医:歯科医院の院長室に銃は、ダメでしょう!

--いや、パンイチのフィギュアも十分ダメでしょう!さいとうプロのところは分業が進んでいるため、ゴルゴ13の連載は今後も継続されるようですね。物件の「ゴルゴ十三」はどうします?改名ですか?

陳歯科医:なんで、ですか。これからも「ゴルゴ十三」は今まで通り、続けさせてもらいます。まあ、考えてみたらサザエさんだって、アンパンマンだって、クレヨンしんちゃんだって、原作者が亡くなった後も、普通に新作出てますもんね。

僕は、大学生の頃から2週間に1回のビッグコミックの連載をずっと楽しみにしていましたし、学生の頃はろくに新聞も読んでいませんでしたから世界情勢や事件の知識は、ほぼ、ゴルゴ13で勉強していましたから。

--それを勉強とは呼びませんけどね。しかし、フィクションとは思えないリアリティーさもありました。

陳歯科医:歯科医になってからも「俺は、ただ依頼者が絶対的に求める、技量と、価値観を身につけるよう心がけているだけだ」という第133巻のゴルゴ13の言葉を座右の銘に、日本矯正歯科学会や日本製人矯正歯科学会をはじめ、日本障害者歯科学会、日本顎関節学会、日本歯科麻酔学会、日本レーザー医学会などの認定医・指導医や専門医資格を取って日夜研鑽しています。

--自慢かいな、その割には、以前、奥様の親知らずを上下間違えて抜いちゃって、えらい怒られたって仰ってましたよね。

陳歯科医:そんな「覚えておく必要のない過去は、早く忘れる事だ(第112巻)」とデューク東郷も言ってますし「この場を逆転できる手段があったのなら、余計な口を利いてないで行動することだ(第117巻)」という事で、そろそろ次の患者さんがいらっしゃいますので、これにて失礼致します。

--今日は、どうもご協力ありがとうございました。

陳歯科医:「利き腕”を人にあずけるほど、俺は“自信家”じゃない。だから握手という習慣も俺にはない(93巻)」

--いつもは普通に握手してはるのに、まあこのコロナ禍なんで別によろしいですけど、では失礼します。

陳歯科医:さいとう・たかをさんには、あらためてお礼を言いたいです。

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