京都市が財政難に陥り、市営地下鉄も乗客減により経営健全化団体に転落する中、地下鉄烏丸線に新型車両が導入されることになった。京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」のLINE(ライン)には「経営状況が厳しい中で必要か」といった意見が複数寄せられている。市交通局に車両開発の経緯や必要性を聞いた。
烏丸線に新型車両が導入されるのは、1981年の開業以来初めて。来春に運行を始める予定だ。
なぜ今、新型車両を入れることになったのか。交通局によると、最大の理由は、現行車両が使用に耐えられるのは40年程度と想定されていることにある。それ以上使い続けると、故障や事故の恐れもあるため、初期の車両については更新を決めたという。
交通局は2012年に車両新造の検討を始め、19年度に鉄道車両メーカーと契約を締結した。1両あたりの費用は約2億円で、予備の部品を含めると総額約110億円に上るという。今後は毎年2編成ずつ導入し、25年度までに20編成のうち9編成を順次更新していく予定だ。
残る11編成は、1988~97年の製造で比較的新しく、さらに10年程度は使用できるため、今のところ更新の予定はないという。
新型車両の導入には、メリットも多いと交通局は説明する。車内には車いすやベビーカーのスペースを増設し、表示もユニバーサルデザインを取り入れるなど、現行車両よりバリアフリー化が進む。電力消費が3割ほど減るので、省エネやコスト削減の効果もある。自動列車運転装置(ATO)も搭載。ホームドアのある京都(京都市下京区)や四条(同)などの駅で正確な位置に停車させるのが容易になるため、運転士や車掌の負担が軽減されるという。
こうした利点がある新型車両だが、不運にも市営地下鉄の最も苦しい時期にデビューが重なってしまった。新型コロナウイルスの感染拡大による利用者減少で収支が悪化。経営健全化団体に転落し、経営立て直しのため値上げが検討課題に上がっている。市自体も税収減で財政危機に直面しており、門川大作市長は「地下鉄に財政出動する考えはない」と明言した。市民感情として、車両更新を手放しで喜べない状況にある。
交通局は「地下鉄を市民生活の足として維持していくためには、車両新造が必要だった。故障や事故を未然に防ぐためにも、キャンセルは考えていない」と市民に理解を求めている。