新型コロナウイルス感染症対策として、増え始めている勤務形態「在宅ワーク」。オンライン上での会議、チャットでのやりとり…確かに自宅にいても、他の社員と同じオフィスにいるかのような感覚で仕事ができるというメリットがある反面、時間帯に関係なく仕事をすることになる方もいるようです。
在宅ワーク切り替えと同時に始まった連絡の嵐
Aさん(36歳・女性)が勤務するIT企業では、新型コロナウイルス感染症が流行して早々に在宅ワークへ勤務形態を切り替えました。
当初、Aさんは「通勤時間がなくなるなんて幸せ!」「これで少しは身体的負担が軽くなる!」と思っていたのですが、いざ在宅ワークが始まると、ある壁に直面したそうです。
それは、時間帯に関係なく他の社員から送られてくるメールやチャットの嵐でした。
Aさんの勤務時間は午前9時から午後6時までですが、午後6時以降もスマートフォンの通知音が鳴りやみません。
「在宅ワークでも出社のときと勤務時間は変わらないはず。いい加減にしてほしい…」
だんだん、Aさんは精神的に追い込まれるようになりました。
メールやチャットを無視していいのか葛藤
Aさんの上司は、仕事がずば抜けてできるバリキャリ系の女性です。
しかし、困ったことに仕事の用件を思い出したら、すぐに伝えたくなるらしく、夜の10時でも「ところで、あの件のことだけど…」とチャットやメールが届くことも多々ありました。
Aさんは仕事への責任感が強く、上司から指示されたことはすぐに対応するよう心がけているそうです。そのため、上司からメッセージが来ると、夜遅くても関連する書類をチェックせずにはいられませんでした。
書類をチェックしては上司に返信をする、また上司から返事が来る。このようなやり取りが幾度となく続いても、Aさんは「上司からのメールやチャットは無視しちゃダメだよね…」と思っていたのでした。
「定時以降の連絡は返信が遅くなることを伝えればOK」
限界が迫っていたAさんは、同僚のBさんに上司とのことを相談しました。
「上司からメールとかチャットが来るのは、さすがに無視できなくて…」とAさんが言うと、Bさんは「上司とか、同僚とかの問題じゃない。そもそも、就業時間以外に思いつきで社員に連絡してくるってどうなの?配慮が足りなすぎるじゃない。はっきり言っていいのよ。『定時以降の連絡は控えてください』って。それが言えないなら『定時以降の連絡は返信が遅くなると思います』って、やんわり伝えたら?いつまでも夜遅くまで対応する必要はない」と言い放ちました。
Aさんは、その言葉を聞いてハッとしたと同時に、上司に順応に従いすぎて、自分の感情を犠牲にしていることに気付かされたそうです。
後日、Bさんからのアドバイスを参考に、Aさんは上司に、定時以降の連絡は返信が遅くなることを伝えました。
すると上司からは「了解!私、すぐ忘れちゃうから時間関係なく共有しちゃってたけど、これからは、できるだけ定時内に連絡するように心がけるね!」と返事があったそうです。
Aさんは当時を振り返り、「こんなに苦しむ前に、もっと早くそう伝えておけばよかった」と話してくれました。この話を通じて、在宅ワークでも目の前に相手がいる時と同じくらい相手に気を遣うこと、そしてモラルを守ることが大切なんだと感じました。また、他の社員とのやりとりで違和感がある時は、自分の意志を伝える勇気を持つことが大切だということも学びました。