コロナ禍の最中行われた東京オリンピック。賛否渦巻く状態での開催でしたが、世界各国から集まったアスリートが勝負に挑む姿や、国境を超えて選手同士がリスペクトし合う姿に、感動をもらいました。日本は過去最多の58個のメダルを獲得するなど大健闘しましたが、とくに注目を集めたのは今大会から新種目として採用されたスケートボードではないでしょうか。
堀米雄斗選手・西村椛選手・四十住さくら選手らの金メダルをはじめ、多くの日本人選手がメダルを獲得。連日競技の話題が取り上げられた結果、若い世代以外にも関心を持つ人たちが増え、「スケボーブーム」のような盛り上がりを見せています。しかし、かねてからスケートボードを楽しんできた人たちは、さらに厳しい目で見られるようになったといいます。
スケートボードを始めて2年になる、関西在住のKさん(10代・高校生)に話を聞きました。
「どうせオリンピックの影響でしょ!」と冷ややかな目で…
Kさんは2年前から友人に誘われてスケートボードを始めました。地元にはスケートボードの練習ができるスケボーパークはあるものの、自宅から遠いことや高校生が毎日使用するには料金が高額であることから、スケートボードが禁止されていない場所がある近くの公園で練習をしていました。
小さな子どもたちがいなくなる時間や離れた場所で練習をしていたとき、ある女性から「どうせオリンピックに影響されたんでしょ。ミーハーな動機じゃ無理、無理」と公園から出ていくように言われたといいます。3人で練習をしていたKさんたちは「他の人に迷惑はかけない」「ここはスケボー禁止の場所ではない」ということ伝え、練習を続けました。
公園にパトカーが!どこで練習すればよいのか…
Kさんたちが練習を続けていると、公園にパトカーが停まり、2人の警察官がKさんたちに声をかけてきました。「苦情が入ったから、他の場所で練習してもらえるか」と言われたのです。
Kさんたちはスケボー禁止のエリアではないこと、どこならスケボーをしてもよいのか警察官に聞くと「スケボーパークが一番いいのでは?」と言い、帰っていったのです。
その翌日も違う公園で練習をしていると「お前ら邪魔だな。オリンピックの影響受けすぎ」と見知らぬ男性に強い口調で注意されました。
スケボーパークは密になっている現状
これまで以上に公園でスケートボードをすることが厳しくなっていると感じたKさんたちは、数日後スケボーパークに行きました。すると、そこはこれまで以上に大勢の人が来ており、パーク内は過密状態になっていました。
Kさんたちもよく見かける常連の人に加え、小さな子どもを連れた親子など、さまざまな人が入り乱れており、公園で練習を行うよりも、けがや衝突のリスクは高いと感じたそうです。
これからも注目されるとは思うけど…
マスコミでも連日大きく取り上げ、盛り上がりを見せたスケートボード。スケートボードを始める人が多くなり、日本ではこれからさらにスケートボードは注目されると思います。しかし「練習場所がない」「初心者はパークを使用しにくい」「公園で練習をすれば苦情が来る」など課題は多いのが現実のようです。
いますぐ状況が改善されるわけではないことは、Kさんも理解していると話していました。しかし男女平等・LGBTなど多様性や個人が尊重される社会で「スケートボード=不良・迷惑」といったイメージが払拭されていないのではないかとKさんは感じています。ブームに乗じて、いっそう厳しい目で見られることがあるという現実を、多くの人に知ってほしいと話してくれました。