劣悪な環境の繁殖場から救われた犬 片目を失明していたが、散歩が大好き、感情を表現できるように

渡辺 陽 渡辺 陽

ブリーダーからレスキュー

ぐみちゃん(8歳・メス)は、劣悪な環境で犬の繫殖をしているブリーダーのところで繁殖犬をしていた。他の犬と一緒に保護団体にレスキューされたが、眼の治療をしてもらえなかったため、眼球が飛び出ていた。他の犬も腫瘍などの病気を抱えていたが、治療は受けていなかったという。

宮崎県に住む牧野さん夫妻は、動物が好きで、「いつか犬を飼いたいね」と話していた。ただ、当時はペット不可の物件に住んでいたため、すぐに飼うことは考えていなかった。しかし、結婚してから2年経った頃、友人がインスタグラムに、実家で飼っているというパグの子犬の写真を投稿していて、「パグを飼いたい、今すぐ引っ越そう」ということになったという。

牧野さんはペットサロンを経営しているが、スタッフがパグを飼っていて、その可愛らしさにほれ込んだことも影響した。

憧れのパグ犬 

夫妻はパグ犬を探し始めた。

「でも、私たちはペットショップ反対派。絶対にペットショップで買うのは嫌で、保護犬の里親になろう!と決めていました。でも、私たちの住んでいる地域には、なかなかパグの保護犬がいなかったんです。毎日のように譲渡会や保護犬に関する情報をチェックしたのですが、パグの保護犬は見つかりませんでした」

パグを探すのをあきらめようかと思いつつ、保護犬情報をチェックしていたところ、保護団体「咲桃虎」のブログにぐみちゃんが載っていたという。

そのブログを見たのは金曜日、夫妻は翌日が休みだったので、絶好のチャンスだと思った。牧野さんはすぐに夫に相談し、翌日、3時間ほどかけてぐみちゃんに会いに行った。

右眼は完全に失明、左眼もほとんど見えず

「咲桃虎」に着くと、保護犬の部屋に案内された。10個ほどのケージが2段重ねになっていて、ぐみちゃんは部屋に入ってすぐ右側のケージにいた。

人の愛情を知らずに生活してきたのに、ぐみちゃんは、夫妻の気配を感じて尻尾を振ってくれた。無邪気で人懐っこいぐみちゃんだが、牧野さんはスタッフから、「その子は目が見えてない」と聞いた。

「ぐみは7歳でしたが、眼の治療をしてもらえず、眼球が突出し、片目は完全に失明していました。後に、『もう片方の目も光を感じる程度だね』、と獣医師に言われました」

ぐみちゃんを抱っこさせてもらうと、少し怖かったのか、ケージから出るのを嫌がった。しかし、抱っこしたら大人しく身を預けてくれて、牧野さんは、「なんだか優しそうで明るい子だなあ」と思ったという。

目は見えないが元気いっぱい

牧野さんは、そのままぐみちゃんを連れて帰った。ぐみちゃんは、家に着くまでお利口にしていた。

家に着いてからケージの中に入れると、遠吠えをして、少し戸惑っているような感じだった。

「それからは、少しずつケージに入ること、私たちと一緒に居ること、食事、排泄、散歩などに慣れていきました」

今では目が見えていないことを忘れるほど元気いっぱいで、散歩もグングン歩いて行く。わがままを言ったり甘えたり、感情を表現できるようになったという。

ぐみの目はこんなにきれいだったんだ

性格はわがままで甘えん坊、頑固なところもある。好きなことは、散歩とガムで遊ぶこと、ご多分に漏れず食べることも大好きだ。

ぐみちゃんは、左側の目が特に突出していて、ひどいドライアイだった。

「目の表面が汚れや毛でガチガチに固まっていて、地元の動物病院では取ることができず、他の動物病院を紹介してもらって目の汚れをきれいに取ってもらいました。『ぐみの目はこんなに綺麗だったんだな』と感動しました」

一緒に海に行ったことも忘れられない思い出だ。

「たぶん、ぐみにとって人生初めての海だったと思います。目が見えないので景色は見えませんが、波の音に少し驚いていました。海にはあまり近づけないので近くを散歩しましたが、ずっと楽しそうニコニコしていたのを覚えています」。

もとから明るい家庭だったが、ぐみちゃんが来てからさらに会話や笑顔が増えたという。

「生活の中心がぐみになり、休みの日に出かける場所も変わったし、クリスマスやお正月などのイベントも今まで以上に楽しくなりました」

■ぐみちゃんのインスタグラム→https://www.instagram.com/gumi_0627/

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