1990年代後半から全国の公共施設等を中心に普及した「ホームレス排除ベンチ」などの“排除アート”。
何気なく見過ごしてしまっている方も多いと思うが、さもお洒落なデザインしたかのように取り付けられたベンチのあの仕切りや凹凸は、ホームレスが寝起きの場所に出来ないようにする意図を持つことも少なくない。
先日、そんなホームレス排除ベンチの必要性について考えさせられる投稿をTwitter上で見かけた。
「排除ベンチについて"汚いホームレスがいたら嫌だろ"みたいなこと未だにいってる人いるけどそもそももう東京のホームレスの人数900人を切ってて20年前の 1/6以下になってる。もう排除すべきホームレスがそもそもいない。20年間感覚をアップデートできてない人達は本当に反省してほしい。」
東京都にお住まいの「女性」さん(@ssig33)によるものだ。この投稿に対し
「まだ1000人もいるじゃん。
失うものが無い無敵の人には、正直近くにいてほしく無いって人が多いだけの話。
私は排除ベンチ大賛成。
人数が減ったから排除しちゃダメなんて意味がわからない。
せめて清潔にしてくれれば何も思わんよ。」
といったコメントを寄せるSNSユーザーもおり、必ずしも大勢が賛同しているわけではないのだが、まだまだホームレスが多く実際に治安に悪影響を与えていた時代は過去となった。それでも未だにホームレス排除ベンチだけが残っているというのも、深刻な思考停止ではないかと思えた。
女性さんにお話をうかがってみた。
中将タカノリ(以下「中将」):今回のご投稿のきっかけをお聞かせください。
女性:単純にそもそもホームレスがもうあんまりいないのに、過去の感覚でホームレスがたくさんいる前提で話をしている人が多そうで気になりました。
中将:都内のホームレス事情の変化についてご自身で何か感じられることはありますか?
女性:正直ここ数年というスパンでは、もうあまり変化を感じていません。そしてそれ以前の「感覚」をもはや思い出すことはできません。「シェルターの建設やそこへのホームレスの誘導」と言うにせよ「見えるところからの排除」と言うにせよ、それらはもはやとっくに事実上、完了しているのだろうと思っています。ネカフェ難民への移行という流れもあるのかもしれませんが、その実態はよく知りません。
中将:今回のご投稿への反響についてご感想をお聞かせください。
女性: 「事実は事実として」という感じで受け取ってる人が多そうです。表全体ではなく、もっと切り取った形であったら違う感想の人も多いのだろうと思っています。「自分の生活範囲にはまだまだ迷惑なホームレスが多いから嫌い」という主旨のことを言ってくる人もいましたが、まあそれはそんなもんだろうと思っています。
女性さん関連情報
Twitterアカウント:https://twitter.com/ssig33
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近年はホームレス排除ベンチなどの排除アートについて異を唱えるデザイナー、建築家も増えているようだ。実際問題としてホームレス対策に苦悩する公共施設の関係者もいるだろうから、こういったものを完全に改めよとは言わない。しかし、単なる思考停止からそれを設置し続けることは、知らず知らずの間に社会の不寛容を助長することになるのではないかと危惧するのだ。