「人を殴るのは、悪いこと。」
「大の大人に、言うことじゃないよな。」
仮面ライダー1号の本郷猛役で知られ、近年はテレビの動物番組などでも親しまれている俳優の藤岡弘、さんが、あの力強い目で私たちにこう語りかけてくる。
写真もコピーもインパクト十分のこの画像、実はJRなど全国の鉄道事業者が共同で暴力行為防止をPRするポスター。7月9日から2カ月間、各事業者の駅構内や列車内に掲出され、藤岡さんが「NO MORE 暴力行為」とばかりに睨みを利かせる。
ポスターは駅係員や乗務員らに対する暴力行為、客同士のトラブルを未然に防ごうと毎年夏と冬に掲出。「お酒の失敗じゃない。あなたの失敗です。」(2018年12月)、「酔った勢いで人生はこわれる。」(2020年12月)などの“刺さる”コピーはSNSなどでもたびたび話題を集めてきた。これまではイラスト作品が多かったが、今夏はデザインコンペの結果、「存在だけで正義感が伝わる」という藤岡さんを大々的にフィーチャーすることになったという。
コロナ禍で輸送人員減→暴力行為の件数は?
全国の鉄道・軌道事業者73社でつくる日本民営鉄道協会によると、啓発の効果もあってか、ここ数年は暴力行為の発生件数は減少傾向にある。2020年度はJR各社なども含む全国37社局で計377件だったが、これは前年度の581件を大きく下回っている。
とはいえ大手16社では新型コロナウイルス禍の影響で輸送人員が3割ほど減っており、そんな状況でもこれだけの件数が発生しているのは「楽観視できない」(同協会の担当者)。2021年の下半期は人の流れがさらに戻ってくることも予想されるため、「より安全に、安心して鉄道を利用できる環境をあらためて整えたい」として、藤岡さんに望みを託した。
同協会などによると、2020年度は緊急事態宣言が発令された4月と1月の発生件数が目に見えて少なかった。加害者の年齢に偏りはなく、幅広い年代に分布。時間帯別ではやはり深夜が多く、飲酒との相関関係も見られたという。
「実物を見るとその迫力におののく」(関係者)という藤岡さんのポスターを拝めるのは9月8日まで。