夏本番を前に、複数のティーン向けファッション誌がモデルのボディーサイズを誌面上で公表した。中には「ダイエットの目標にしてね」などと呼び掛けた誌面もある。モデル体形にあこがれる子どもたちの興味を引きつける狙いとみられるが、摂食障害の専門家は子どもたちを過剰なダイエットに駆り立てるおそれがあると警鐘を鳴らしている。
7月号にモデルのボディーサイズを掲載したティーン向けファッション誌は、取材で把握できた範囲で少なくとも、女子中高生を対象とする「Popteen(ポップティーン)」と女子中学生を主な読者とする「nicola(ニコラ)」の2誌が挙げられる。
「ポップティーン」は、高校1年から大学2年のモデル22人の身長や体重、ウエストと太もものサイズを公開した。「自分の理想の体型のモデルがいたらサイズ表をチェックして、ダイエットの目標にしてね」とうたった。
「ニコラ」は高校1年のモデル1人にスポットを当てた。ストレッチや運動、食事管理といった体形維持法とともに、身長や体重などのほか、体脂肪率や足首のサイズにいたるまで2ページにわたって紹介した。
京都新聞社は、こうした企画の狙いなどについて「ポップティーン」と「ニコラ」の編集部に取材を申し込んだ。
ポップティーン編集部は「そういった取材の対応は難しい」と回答した。
一方、ニコラ編集長は「思春期に太る悩みを抱えている子は多く『同世代のモデルたちはどう体形を維持しているか』について関心は高い。『自分のサイズと比較したい』という思いがある子もいるので、ボディーデータを細かく載せています」と意図を説明した。
ダイエット企画を載せる際は「運動やストレッチ、マッサージを中心にする」「食事管理法は管理栄養士に監修してもらう」ことなどを方針に一定配慮もしているとする。
しかし、日本摂食障害学会理事で「のまこころクリニック」(京都市伏見区)院長の野間俊一医師は「間違った価値観を植え付けかねない。数字が一人歩きし、摂食障害を助長する可能性があります」と危険性を語る。
そもそも「痩せ」とはどのような状態か。
世界保健機関(WHO)は身長と体重から算出する体格指数(BMI)18・5未満を「低体重」と定義する。BMIは大人の指標のため、子どもに必ずしも当てはまるわけではないが、今回、ボディーサイズが公開されたモデルたちの60%以上は18・5を割り込んでいた。
女性の場合、BMI18・5を下回ると、月経不順や無月経など身体的不調があらわれることが多い。10代のころのいきすぎたダイエットが骨粗しょう症や低体重児出産といった将来のリスクにつながるおそれもある。
野間医師は「思春期はダイエットすべきではないですね」と断言し、ティーン向けファッション誌のモデルたちについても「未成年のモデルは大人が守らないといけないのに、この体形を褒めたたえるというのはモデルも被害者」と指摘した。
拒食症や過食症といった摂食障害は、10、20代女性の患者が多い。思春期は、体形の変化に不安を抱いたり、周囲の評価を気にしたりするため、頑張った分だけ結果が出るダイエットにのめり込みやすいことが背景の一つとみられるという。
「太ったから痩せた方がいい」という保護者の言葉をきっかけに摂食障害を患う人も少なくない。野間医師は「親御さんはダイエットの危険性を知り、体形や体重についてのコメントは慎重にすべきです」と注意を促す。
また、こうした雑誌を子どもから取り上げてしまうのではなく、題材にして親子で話し合うことも、子どもをいきすぎたダイエットに向かわせないために重要だと説く。
野間医師は「ダイエットは健康を害するだけでなく、リバウンドしてかえって体重が増えたり、勉学に支障を来したりと思わぬ結果を招くこともある。数字にとらわれないでほしい」と子どもたちに訴える。