2階建の旅客機「A380」で飛ぶANA成田発遊覧フライトが人気のワケ 「九州か北海道か」航路は機長にお任せ

松田 義人 松田 義人

 コロナ禍で事実上の海外旅行ができなくなっている今、連日報道されている通り、甚大なダメージを受けている航空業界。そんな中、航空各社では本来運航するはずだった飛行機を使っての「遊覧チャーターフライト」を実施するところもあるようです。

 確かに飛行機にはロマンがあります。でも、それは移動も込みで成立するもので「遊覧」だけでは利用する人は限られるのでは? と思っていた筆者ですが、ところがどっこい「遊覧チャーターフライト」はかなりの人気のようで、チケット販売の好調ぶりに抽選方式をとる会社まであるようです。

 その一つがANAで、同社では「ANA FLYING HONUチャーターフライト」というサービスを実施しています。

 

 約3時間30分のフライトで、1人3万4千円からの旅行代金ですが、本来、成田・ホノルル間を行き来するA380という飛行機(通称・FLYING HONU)を使い日帰りで日本上空を遊覧飛行するという貴重かつ有意義なもの。今回はその中身と人気の秘密についてANA X(株)国内旅行事業推進部・商品開発チームの平塚弥美さんに話を聞きました。

 

コロナ禍以前は「初日の出フライト」しかなかった「遊覧チャーターフライト」

 ――注目を浴びている遊覧チャーターフライトですが、ANAではコロナ禍以前も実施されていたのでしょうか?

平塚弥美さん(以下、平塚) コロナ禍以前は「初日の出フライト」という初日の出を見て帰ってくるサービスがありましたが、現在行なっているような「遊覧チャーターフライト」は、コロナ禍以降に初めて取り組んだものです。

 コロナ禍で飛行機を飛ばせる機会が著しく減りましたが、飛行機は定期的に整備のための飛行をしないといけません。昨年6月に整備のためにお客様を乗せずに飛行しているという報道をご覧になったお客さまから「せっかく空を飛んでいるのだから、搭乗できないのか」といったお声をいただき、それを受けて「遊覧チャーターフライト」の実施をスタートさせました。昨年8月のことです。

――あくまでも「遊覧」ということで「移動」ではなく、ぐるっと回って帰ってくるものですよね。

平塚 そうです。前例がないものでしたし、正直当初は「成立するのだろうか」と不安に思うところもありました。しかし、実施させていただいたところ想像以上の反響がありました。厳正な抽選方式でのチケット販売を行っていますが、相当な倍率での販売となっています。「◯回目でやっと取れました」というお客さまの声もあり、恐縮しながらも本当にありがたいことだなと思っています。

 また、ご利用いただく方も下はお子さんから、上は90代の方まで様々で、どの年代の方にも喜んでいただけることを嬉しく思っています。

――遊覧の航路は決まっているのですか?

平塚 「成田空港から飛ぶ」ということだけが決まっており、航路は2パターンあります。「南回りで富士山上空を通過し、九州方面を巡って帰ってくるもの」、そして「北上し東北から北海道を巡って帰ってくるもの」です。そのときどきの天候などを加味して機長が判断して航路を決める流れになっていますので、当日のお楽しみです。

ANAの「遊覧チャーターフライト」の人気の理由は「世界最大」の機体にもアリ!?

――そのANAで実施している「遊覧チャーターフライト」はA380という通称「FLYING HONU」という、本来は成田・ホノルル間を運航する機体を使ってのものです。この飛行機に乗れることも人気の理由の一つかもしれませんね。

平塚 はい。A380は世界最大の2階建の旅客機で、この飛行機に乗れること自体も人気の理由だと思います。本来はハワイに飛ぶために導入した旅客機ですのでハワイ語のウミガメを表す「HONU」をこの名に取り入れました。ウミガメを模したかわいいデザインも特にお子さんには喜んでいただけるようです。

 また、ご参加された方には国際線でご提供しているお食事やお飲み物、アメニティキットなどANAオリジナルグッズの記念品、機内でのクイズや抽選会などの催しもご用意させていただいております。

 さらにオプションにはなりますが、「成田空港スペシャルバスツアー」というものもあります。「遊覧チャーターフライト」の3時間ほど前に、成田空港に入っていただき普段はなかなか目にすることができない滑走路など、空港の裏側を見学するツアーもあります。合わせてご利用いただければ丸1日、飛行機+空港の楽しさを満喫していただけると思います。

 

 

  

これからも模索する、飛行機の新しい魅力・サービス

――コロナ禍で打撃を受けている航空業界ですが、こういった従来とは違う取り組みは今後も行っていくのでしょうか?

平塚 すでに「遊覧チャーターフライト」以外にも機体の中で行うウェディングも実施しましたし、駐機している機体の中で機内食を召し上がっていただき、機体そのものの見学とセットにしたツアーなども実施しています。

 今後もしばらく続くと思われるコロナ禍ですが、「遊覧チャーターフライト」はもちろん、遊休機材を使ったサービスやツアーはこの他にも展開していきたいと思います。これからもお客さまのご記憶に残るようなサービスをご提供させていただきながら、私どもも飛行機の新しい魅力・サービスを模索していきたいと思っています。

 

 平塚さんのお話から、従来の飛行機の在り方とはまた違う魅力を打ち出し、それを支持する人が増えている今の状況がわかりました。人気の「遊覧チャーターフライト」ですが、機会がありましたら是非参加してみてはいかがでしょうか。これまでの飛行機利用とは違う魅力の発見があるかもしれませんよ!

■ANA国内チャーター機イベント https://www.ana.co.jp/ja/jp/domtour/theme/charterflight/

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