あの「どついたるねん」以来の手応え!?浪速のロッキー赤井英和、最新主演映画で大いに吼える

黒川 裕生 黒川 裕生

大阪・新世界を舞台に繰り広げられるアクション映画「ねばぎば 新世界」が7月の東京、京阪神などを皮切りに、全国公開される。勝新太郎・田宮二郎コンビの「悪名」シリーズを思わせる、不器用ながらも熱く真っ直ぐに生きる主人公が活躍する痛快な勧善懲悪ストーリーだ。主演は赤井英和と、監督・脚本・プロデューサーもこなした上西雄大。「最高の映画ができたのは赤井さんのおかげ」「いえいえ、脚本のおかげです」と互いをリスペクトしまくる2人に話を聞いた。

かつてヤクザの組を潰して回っていた正義感の強い勝吉(赤井)は、運営していたボクシングジムを練習生の不祥事で畳み、今は新世界の串カツ屋で働く毎日。ある日、昔の弟分で勝吉を「親分」と慕うコオロギ(上西)と再会し、またつるむように。2人は偶然、武という少年を助けたのをきっかけに、ある宗教団体と戦うことになるのだが―。

自分にぴったりの役、「どついたるねん」以来の手応え

――勝吉は最初から赤井さんの当て書きだとか。

上西「もちろんそうです。僕がずっと憧れていた、雲の上の、もっと上の人。共演できて本当に嬉しい。赤井さんはNGもなく、セリフには真っ直ぐな心がこもっていて完璧。撮影は超順調で、予定よりも3時間、時には5時間早く終わった日もあるくらいです」

赤井「素晴らしい脚本。俺にぴったりの役を書いてくださって。今までドラマでも映画でもとにかくNGばっかり出してきたけど、今回はバンバンバンバン!という感じで非常に上手くいきました。セリフも口先ではなく、本当に腹の底から出てくる感覚で、無理がないのが良かった。こういう手応えは、俳優をやっていて初めてに近いです。もしかしたら(自身の自伝の映画化である)『どついたるねん』(1989年)以来かも」

――ポスターのデザインからもわかりますが、懐かしい雰囲気の作品です。

上西「時代設定は今なんですが、昭和の雰囲気をあえて打ち出しました。今回意識した『悪名』をはじめ、僕が好きな昭和の映画って人間をくっきり、ちゃんと描くんですよ。自分が作る映画でも、人間をちゃんと描きたいといつも思っています。赤井さんと『悪名』の世界をもう一度!という思いで作ったので、懐かしいなと思いながら楽しんでもらえれば最高ですね」

赤井「若い人たちにもこの空気感を味わってもらいたい。ここまで“昭和感”のある映画、今はなかなかないと思うんで、逆に新鮮なんじゃないでしょうか」

赤井の実家でも撮影

――舞台となっている大阪の新世界や西成界隈は、赤井さんの故郷です。

赤井「武が体調を崩して寝ている部屋、あれウチの実家ですねん。我々夫婦が寝ていた向かいの部屋。玄関も実家が使われてますし。新世界や西成、飛田新地…、俺が育ってきた思い出深い場所で撮影されているので嬉しいです」

――シリーズ化を目指していると聞きました。

上西「いくらでも話は湧いてきます。明後日までに脚本を書けと言われたら書ける。大事なのは『勝吉とコオロギが悪にどう立ち向かうか』。芯にあるのは勝吉の『弱い者を助ける』という真っ直ぐな正義感と、それに惚れたコオロギです。あとは敵さえ設定できれば、どんどん作れますよ」

赤井「シリーズ化されたら、もちろん出ます!世の中には悪があり、許せないものがある。この2人ならどう解決してくれるんだろうと自分でも期待してしまいます。いろんなところで暴れまくる2人を見てみたいですね」

ベタな物語に赤井の魅力が炸裂

――公開後、どんな反響があるでしょうね。

上西「どう見てもらえるか楽しみでもあり、怖くもある。『ベタベタな話やん』と思う人もいるでしょうから。でも僕は、ベタがダメだとは思いません。ベタをひとつの作品に昇華するには、俳優の強い力が必要なんです。『ねばぎば 新世界』のストーリーは確かにベタですけど、赤井さんの魅力が全編で炸裂しています。途中で興醒めせず、映画を最後まで成立させることができたのは、全て赤井さんの力。赤井さんがいてこその作品です」

赤井「いえいえ、私は脚本の力だと思っています」

上西「関西人なら誰もが赤井さんにその人なりのイメージや思い入れがあるはず。かつての浪速のロッキー時代に胸を熱くした人にも見てもらいたいし、同じ時代をくぐり抜けてきた人たちに『久しぶりにこんな映画見たわ』と面白がってもらいたいですね」

――上西さんは児童虐待を題材にした前作「ひとくず」もロングラン上映中で、さらに公開待機作もまだあるとか。大変なことになっていますね。

上西「コロナ禍で公開時期がずれたりしてたまたま重なっているだけなんですけど、皆さんにどう思われてるんでしょうか(笑)。ありがたいことに『ひとくず』は何回も劇場に足を運んで見てくださっている人もいます。『ねばぎば 新世界』も同じように愛していただける作品になればいいのですが」

――今おいくつでしたっけ。

上西「57歳です。これからシリーズを作っていくとして、2人が60歳、70歳になっても変わらずアクションができるかどうか…」

赤井「俺はもうすぐ62歳やけど、全然大丈夫ですよ」

上西「赤井さんは本当にすごくて、スタミナも尋常ではない。アクションシーンが僕の何十倍もあるのに全く息が上がらないんです。キレも落ちませんしね。僕なんてちょっとやっただけで熱中症で倒れそうになりました。やっぱり赤井さんはすごいですよ、本物ですよ!」

「ねばぎば 新世界」は東京の新宿K's cinemaと長野の千石劇場で7月10日から、大阪のなんばパークスシネマ、MOVIX堺、京都みなみ会館で7月16日、第七藝術劇場で7月17日から公開。その他の上映館は公式サイトで確認を。

■「ねばぎば 新世界」公式サイト https://nebagiba-shinsekai.com/

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