卵や牛乳、バターなど、動物性の原料を一切使わないパンづくり。実店舗をもたず、イベント出店とネット販売でしか手に入らない漢方食パンが大阪にある。
大阪・天王寺ミオで毎週木曜と毎月21日に開かれている食のイベント「ミオソラマルシェ」に、日本でも珍しい「漢方食パンGRAND(グラン)」がある。薬膳の考え方を取り入れてパンを焼く職人・滝野大さんにお話しを伺った。
「卵とか牛乳は使っていません。水の代わりに有機豆乳を使い、塩は天日塩を使った天塩、テンサイ糖とロンガン蜂蜜で甘みを出して基本生地をつくっています」
ロンガン蜂蜜とは、漢方生薬に使われるロンガン(竜眼)の花から採取された蜂蜜で、タイから輸入している。
粉は北海道十勝産の小麦を石臼引き、全粒粉、キタノカオリ、ブレンド小麦粉の4種類を独自にブレンド。美容やアンチエイジングに有効といわれるクコの実、お腹の機能を高めるという山椒、肝臓にやさしいウコンなどのほか、イチジクやレーズンなどを練り込んで、パウンドケーキサイズの食パンを焼く。
ヴィーガンの人も食べられるように蜂蜜を使っていないパンや、小麦アレルギーのある人向けに100%米粉でつくったパンも用意されている。
「米粉パンは、お客さんの要望でつくりました。生地がモチモチしていて、少し焼いて表面に焦げ目をつけると、まるで焼きおにぎりみたいな香ばしい風味が立ちます」
筆者も米粉パン「米米」とイチジクの実を練り込んだ「無花果」を購入して食べてみた。「米米」は、まさにお米のもっちりした食感が生きていて、パンと餅が合わさったような弾力がある。ほんのり甘みも感じ、コンロで軽くあぶって焦げ目をつけてみたら香ばしくなり、表面にパリパリとした歯ごたえがある。
「無花果」は小麦の生地に細かく刻んだ果肉がふんだんに練り込んであって、無花果の甘さが引き立つ。
お勧めの食べ方を尋ねると、「食べる人が美味しいと思う食べ方が、いちばんのお勧めです」とのこと。たしかに、そのとおりだ。
ちなみに商品のラインナップは、季節によって少し変わるそうだ。今は春の商品が終わったばかりで、これから夏向けの商品を考えているという。
フランス料理を志していたが…製菓・製パンに転向
滝野さんは大阪市鶴見区で漢方薬局を営む家に生まれ、幼少期より「医食同源」の考え方が自然に育まれていたという。
日本調理師専門学校フランス料理専攻科を卒業した後、一時はホテルの厨房で働いていた。
「料理を素早く仕上げないといけないのに、作業を丁寧にやりすぎる性分で手が遅いんです。そんな仕事ぶりを見ていた先輩に、製菓とかパンのほうが向いているんじゃないかといわれたのが、パンの道へ進むきっかけでした」
そうして職場を移ったところ、製パン部門に欠員があった。
「製菓も少しやったけど、パンのほうが長いです」
「漢方食パン」をやろうと思いついた動機はなんだろう。
「パンづくりをやるんだったら漢方を取り入れようと、前々から考えていました」
漢方を取り入れたパン屋さんに勤めようとして、お店を探した。
「探しても、漢方を取り入れている店がないんですよ。だったら自分でやろうと(笑)」
高齢になった父親が薬局を廃業して、実家の店舗が空いていた。そこをパン工房に改装して、2014年5月27日に「漢方食パンGRAND」を開業。はじめは実店舗を開いていたが、経営が思わしくなかったこともあり、父親が亡くなってからは工房だけにした。
今はイベント出店とネット販売をメインにして、自然食品を扱う店にも少量を卸している。また、イベント出店ではパンのほか、子供向けに菓子パンも用意されている。
滝野さんの漢方食パンは、イベントでの出店時に直接購入するか、ネット販売で購入できる。
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▽「漢方食パンGRAND」ホームページ
https://hirotakino1961.wixsite.com/grand
〔イベント出店予定〕
https://hirotakino1961.wixsite.com/grand/post/grand6%E6%9C%88%E3%83%BB7%E6%9C%88%E3%81%AE%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88%E5%87%BA%E5%BA%97%E4%BA%88%E5%AE%9A%E8%A1%A8
〔ネット販売〕
https://store.shopping.yahoo.co.jp/grandpain/