新型コロナワクチンは、2回目のワクチンはいつ接種するのか、発熱などの副反応に備えてワクチン休暇を取得したほうがいいのかなど事前に考えておく必要があります。2回目のワクチン接種について、新型コロナやワクチンに詳しい日本プライマリ・ケア連合学会の医師・守屋章成さん(以下、守屋)に聞きました。
なぜワクチンは2回接種しなければならないのか
――ワクチンは一度接種しただけでは効果を得られないのでしょうか。
守屋「ワクチンは、生ワクチンとそれ以外(不活化ワクチンやmRNAワクチンなど)に大きく分けられます。生ワクチンは生きたウイルスそのものなので免疫が強く長く付きやすく、中には黄熱ワクチンのように一度接種するだけで一生免疫がもつものもあります。今回、私たちが接種する新型コロナのmRNAワクチンは生ワクチンではなく、ウイルスのかけらだけから免疫を得るものなので、一度接種するだけでは予防効果が次第に落ちていってしまうのです。
――どのようなペースで予防効果が落ちていくのでしょうか。
守屋「現在接種されているコロナワクチン『コミナティ』の効果を調べたある研究によると、1回目を打った2週間後から予防効果が出始めて、5週目に予防効果がピーク(84%)に達します。しかし2回目を打たないでいると6週目から再び予防効果が落ち始めます。一方で6週目までに2回目を接種すると予防効果は95%まで上がり、短くとも4カ月間は持続することが確かめられています。アメリカなどで接種が始まったのが昨年12月で、間もなく半年が経ちます。予防効果が半年以上もつかどうか、これから次第に明らかになっていくでしょう」
2回目のワクチンはいつ打つのがベストなのか
――2回目のワクチンはいつ打てばいいのでしょうか。
守屋「『コミナティ』の場合、1回目の3週間後に打つのが標準です。ワクチンの効果を最初に確かめた「治験」という研究では2回目を最長で6週後(42日後)に打った人もいましたが、厚生労働省は3週間を超えた場合はなるべく早く打つよう促しています」
――3週間後に打てなかったらどうしたらいいのでしょうか。
守屋「研究で分かったとおり『コミナティ』の場合、1回目接種の後、5週間目に予防効果がピークになり、6週間目から予防効果が落ち始めます。ですから、3週間隔で打ち損なったとしても、5週間目までに2回目を接種するのが安心です。それでも何かの事情で例えば『8週間後にやっと都合が付いた』場合、その8週間の間に感染していなければラッキーだったと思っていただき、都合が付いたらすぐに2回目を接種しましょう」
2回目は副反応が出やすい、ワクチン休暇も考慮
――1回目より2回目の接種後は副反応がでやすいそうですが、それはなぜですか。
守屋「人の免疫は1回目を接種すると異物が侵入してきたことをひとまず認識しますが、4-5週間経つといったん忘れ始めます。忘れ始めた頃に2回目の接種をすると、1回目の時より強く反応します。次に同じ異物が現れたら真剣に戦おうと備えていたところに、『あの異物がやってきた!やっつけろ!』と免疫が頑張るので、発熱や接種部位の疼痛という副反応が現れます。もちろん個人差はありますが、コミナティの場合はこうした理由で1回目より2回目のほうが出やすいと思われます」
――なぜ熱が出るのでしょうか。
守屋「一般に人間に悪さをする病原体はだいたい36~37度くらいの温度を好みます。38度や39度になると病原体は弱くなります。人間の免疫は何百万年という進化の過程でそのことを覚えています。感染した病原体をやっつけようとして自ら体温を上げるのが発熱という現象です。コロナワクチンは病原体(ウイルス)を打つ訳ではありませんが、免疫にとっては病原体が入ってきたように感じられるので、反応して発熱するのです。ただし、接種後に熱が出なくても免疫はしっかり付きます。『熱が出なかったから免疫が付かなかったのは?』と心配する必要はありません」
――接種前に市販の解熱剤を用意しておいたほうがいいのでしょうか。飲み方は?
守屋「市販の解熱剤を用意しておいて、熱が出たら服用して構いません。個人差はありますが、接種翌日に熱が出ることが多いでしょう。そして、だいたい24時間ぐらいで自然に熱は下がります。よって、熱が出始めて24時間ぐらいは解熱剤をのみながら様子を見て構いません。解熱剤を繰り返しのむときは5-6時間以上空けましょう。例えば、接種した翌朝午前9時くらいに寒気がしてきて、10時くらいに本格的に熱が出たとします。解熱剤を飲んで休むといいでしょう。その後も熱を測りながら、体のつらさに応じて5-6時間以上空けて繰り返し飲んで構いません。熱が出始めてから24時間後、つまり接種の翌々日の午前中に体温を計って、熱が下がっていたらもう大丈夫です」
――熱が出始めてから24時間以上経ってもずっと熱が下がらなければどうしたらいいのでしょうか。
守屋「熱が24時間以上続く場合は、接種の直前に感染していた新型コロナを発症したということもありますし、他の病気が原因で熱が出ているのかもしれません。つまり、副反応以外の原因を考えねばなりません。熱が出始めてから24時間以上経っても熱が下がらなければ、必ず病院に受診してください」
――2回目の接種後はワクチン休暇を利用するなど、休めるようにしておいたほうがいいですね。
守屋「医療機関の場合、最初から接触翌日に職員を休ませるところもありますし、熱が出たら休みやすいようにしているところもあります。コロナワクチン接種のために休暇をとらせる企業も報道され始めましたね。その他、接触翌日などには大切なアポイントは入れないようにしたほうがいいですね」
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すでにYahoo! JAPANやコカ・コーラ ボトラーズジャパンでは就業時間内にコロナワクチンの接種に行けるようにしたり、体調不良が発生した場合は特別有給休暇を取得できる制度を導入。厚生労働省は、特別有給休暇について、「労働者が安心して休めるよう、就業規則に定めるなどにより、労働者に周知していただくことが重要」としています。