2階から飛び降り“即死”状態といわれた子猫…6時間の手術を経て奇跡の生還 保護ボランティアの家族に

渡辺 晴子 渡辺 晴子

「子猫が2階のベランダから飛び降りたようで、ほとんど動かない」

そんな話を近所の人から聞いて、子猫のところに駆け付けたという保護猫ボランティア団体「みたか123」代表の牧野桜子さん。昨年11月24日、東京・三鷹市の住宅地でTNR(Trap/捕獲し、Neuter/不妊去勢手術を行い、Return/元の場所に戻す)を行うため、地域猫を捕獲していたところでした。

子猫に駆け寄ってみると、体半分横倒しに倒れていました。すぐに東京都内の動物病院に連れて行ったといいます。診てもらったところ、子猫は生後4カ月くらいの男の子。目立った外傷がないのに、動けない。そこでレントゲンを撮ることになりました。

「頸椎脱臼」と診断 手術をしないと、何日も持たない…

その結果、ベランダから落ちた衝撃のためか頸椎の一部がずれており、「頸椎(けいつい)脱臼」と診断。獣医師からは「手術以外に治すことはできない。(そのままにしておけば)何日も持たないだろう」とのこと。さらに、その手術は難しく「専門医のいる病院ではないとできない」と告げられたといいます。牧野さんはショックを受けましたが、「子猫を助けたい」という一心で手術ができる病院に問い合わせました。

「その子は今すごい痛みに耐えていると思います。手術をするなら即日の方が良く、費用も高いです。また、手術中に亡くなってしまう可能性があるので、猫のためにも安楽死を勧めます」

電話越しに専門医から聞いた「安楽死」。言葉を失った牧野さんは「安楽死なんてありえない」と思い、別の大学病院にも連絡。しかし、手術の予約は「年明けまでいっぱい」と言われました。

獣医師から「“即死”と判断されるような状態」…入院へ

保護してから数日が経ち、手術ができる病院が見つからず焦る気持ちが募るばかり。そんな牧野さんを奮起させたのが大きなケガを負った子猫でした。

「僕は平気だよ。死なないよ」

牧野さんを見つめる子猫から励まされるような声が聞こえてきたそうです。手足は動くし排尿排便もできる。ただ倒れたまま首を動かせないだけ…「子猫の命を助けたい」という気持ちはさらに高まり、再び手術ができる病院を探しました。何とか神奈川県川崎市内にある医療センターを見つけ出し、最初に診断を受けた病院から連絡を入れてもらうことに。すると「すぐに連れてきてください」と。希望を胸に子猫を医療センターに連れて行きました。あらためてレントゲンを撮り、獣医師の口から出た言葉に牧野さんは驚きました。

「レントゲンを見ると、本来ならば即死と判断するような状態。この子が何で生きているのかが分かりません…」

本来なら“即死”。でも、奇跡的に生きているという子猫。入院となりました。初めは、麻酔から覚めない確率も高く手術をためらっていたという獣医師。入院中、ご飯をよく欲しがりたくさん食べるなどけなげに生きる子猫の姿を見て「助けたい」と思うようになったといいます。ついに12月3日、手術となりました。

手術費用は100万円かかりました。牧野さんはホームページやTwitterなどを通じて支援を募り、30万ほど集まったそうです。残りの70万は会費と自費でまかなったといいます。

「普段あまり支援金を求めない会ですが、今回は目の前の命を救いたくて。急きょお願いすることにしました。支援してくださった方には本当に感謝しています」

6時間の手術を耐え抜いた子猫 手術から13日後に退院

子猫は6時間の手術に耐え抜き、手術は成功。“即死”状態といわれた子猫でしたが、奇跡の生還を遂げることができました。そして、手術から13日後の16日、異例の回復で退院に。

また、手術前は、獣医師から「手足の神経が遮断されていたので手術が成功しても、おそらく寝たきりに近い状態」だと言われたそうですが、院内にいる間の検査で、手足の反応が良くなってきたとか。退院後は、月1回の通院と毎日リハビリを行っているといいます。

毎日のリハビリで、子猫はゆっくりと歩けるようにまで回復

「保護した当初は病院から『手術中に呼吸が止まる可能性が高い』などと言われて戸惑った私ですが、腕のいい先生に出会えて本当に良かったです。子猫の命を助けてもらって感謝に耐えません」と牧野さん。

今はリハビリの成果が出てきて「曲がったままの右手首は真っすぐになり、そろそろとゆっくり歩けるようになりました。もっとスムーズに歩けるようになればいいなと、新たに振動療法をやっています」と話します。

こうして大手術を経て奇跡の回復を遂げた子猫のお名前は、ピノくん。牧野さんの家族となりました。保護してから5カ月ほど経ち、ピノくんは牧野さんがお世話になっているかかりつけの動物病院で去勢手術を受けたそうです。ピノくんが元気に歩ける日が来ることを願っています。

   ◇   ◇

※「みたか123」は2011年1月に発足以来、三鷹市内及び時々沖縄にてTNR、保護譲渡活動を実施。2年前より当初の目的の三鷹市と三者協働の地域猫活動を行っている。

■Twitter:みたか123@mitaka123_cat
https://twitter.com/mitaka123_cat

■ホームページ「mitaka123」
http://mitaka123.com/

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