「感謝しているよ」中村優一が作品と共に心に刻む、急逝した佐々部清監督の最後のひとこと

石井 隼人 石井 隼人
佐々部清監督を偲ぶ、中村優一(撮影:石井隼人)
佐々部清監督を偲ぶ、中村優一(撮影:石井隼人)

リベンジ戦とばかりに、前回果たせなかった思いを『大綱引の恋』にぶつけた。鹿児島県薩摩川内市で400年以上の歴史を持つ伝統行事・川内大綱引のシーンでは、主演の三浦貴大と群衆の上に立って太鼓を叩く大役を担った。「国道を封鎖し、リハなしの一発本番。エキストラの皆さん全員が祭り経験者なので、迫力が違います。想像を絶する肌と肌のぶつかり合いがあり、カットの声もかき消されるほど。僕もテンションが上がって、腕がもげるかと思うくらい太鼓を叩きました」と胸を張る。

完成作を見て、佐々部監督も中村の奮闘ぶりを賞嘆。借りは返せた、と思った矢先に突然の訃報。佐々部監督は帰らぬ人となった。「打ち上げの席で佐々部監督は冗談で『俺の作品とほかの作品のスケジュールがかぶったらどっちを取る?』と聞いてきました。僕は真剣に『もちろん佐々部さんの作品です!』と答えました。そんな会話もあったので、次回作で僕がキャスティングされなかったら『どうしてですか!?』と聞きに行こうとさえ思っていました。それなのに佐々部監督は違う場所に行かれてしまって…」と無念。

でも最後に言われた「あのときのことは感謝しているよ」という言葉と笑顔があるから、前を向くことができる。「初号試写を見た帰りの電車内で佐々部監督からそう言われて、僕は『これからも頑張ります!』と答えました。その責任もあるし、佐々部監督の映画への熱い思いと魂を生で感じた者として、この先も俳優として歩き続けられたらと思います」。名匠亡き後も想いと作品は残り続ける。

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