風ちゃん(3歳・メス)は、まだへその緒がついた状態でスーパーのレジ袋に入れて捨てられていた。たまたまその日、窓を開けていたTさんは子猫の声を聞き、小雨が降ってきたので探しに行った。
へその緒がついた子猫たち
2017年7月5日19時頃、東京都に住むTさんは、子猫の鳴き声のようなものが聞こえて気になっていた。家の前の道路は車やバスが通るので、事故に遭う可能性もあった。21時頃、小雨が降ってきたので、Tさんは一人で子猫を探しに出た。
10分ほど探していたら、工務店の倉庫わきの草むらから微かに声が聞こえた。声のするほうに行くと、まさかとは思ったが、レジ袋の中に小さな子猫が4匹入れられていた。茶色い小さな猫が鳴き声の主だった。ぱっと見たときは、死んでいるように見える子猫もいた。Tさんは、ひとりではどうしたらいいのか分からず、長年ペットショップに勤めていて、猫を育てた経験もある友人に連絡し、子猫たちが入ったビニール袋を持って、友人の家に行った。
「4匹は、へその緒がまだ黒くなっていない子もいたので、その日生まれたばかりだったようです。体重は60g。保護した時は、とにかく生きていてくれて良かったと思いました。そして、ゴミのように捨てる人がいるのかという怒りにも似た感情がわきました」
一緒に育てよう
Tさんは、生後9カ月の子犬を飼っていた。友人は大型犬を1匹、小型犬を2匹飼っていて、おまけに猫アレルギーだった。
翌日、先代犬がお世話になった動物病院に連絡して、「保護団体などについて教えて欲しい」と言うと、獣医師が、「小さすぎるのでおそらく保護団体では受け入れられない。素人が育てるのは難しいし、うちで預かりましょうか」と言ってくれた。
動物病院に子猫たちを預けた翌日、友人と一緒に様子を見に行くと、1匹が危ない状態になっていた。
「それを見て、私たちは、4匹を連れて帰り自分たちで育てようと即決しました。しかし、残念なことに7月7日の夜中、1匹は永眠しました」
動物病院で一日預かってもらったら、Tさんも友人も気持ちが落ち着いてきた。
「保護して、それで終わりでいいのかな?と思いました。友人も同じ気持ちでした。とにかく生きてほしいと思い、友人に『一緒に育ててもらえないか』とお願いしました」
大きくなれ、強くなれ!
Tさんと友人は、生活や仕事の都合を考えながら、互いの家を行き来しつつ、2時間おきにミルクを与え、離乳食を食べさせた。7月12日、ちょうど1週間で目が開き、少しずつ体重が増え、発見した時の3倍になった。仮の名前もつけ、大きくなれ、強くなれと必死で育てた。
犬たちも協力してくれた。子猫たちは母猫を知らないが、まるで母猫のように犬たちにくっついてまわり、くっついて寝た。犬たちも、お尻をなめてあげたり、おっぱいをあげようとしたりした。Tさんが飼っているキャバリアの楽ちゃんは、子猫のことが気になって仕方ないようだった。
生後3週間が過ぎる頃、Tさんは茶トラ白の女の子を、友人はキジトラの男の子を家族として迎えた。茶トラの男の子も里親が決まったという。
先住犬を姉妹のように慕う
子猫の鳴き声が聞こえた日、最初に気がついた時はまだ雨も降っておらず、窓から涼しい風が入ってきていた。風に乗って子猫の声が聞こえてきたので、Tさんはどうしても「風」という文字を名前に入れたいと思い、読みを「ふうちゃん」にした。
風ちゃんは甘えん坊で、自分を犬だと思っているほど犬が好き。先住犬の楽ちゃんとは9カ月違いだが、朝から追いかけっこをし、取っ組み合いで遊び、くっついて眠る。
風ちゃんは、先住犬の楽ちゃんが去勢手術で一泊二日留守にした時、ニャアニャア探しまわり、ごはんも食べずにしょんぼりしていた。楽ちゃんがエリザベスカラーを着けて帰ってきたら、心配そうに寄り添って離れなかったという。