多頭飼育崩壊でレスキューされた保護うさぎ 里親さんちの犬とすぐ仲良しに、一緒に遊ぶ毎日

岡部 充代 岡部 充代

 犬とうさぎって、こんなに仲良くなれるものなの? トイプードルのトトちゃんとミニうさぎのベルちゃんは、何年も一緒に暮らしているかのように仲が良いのですが、実際はまだ3カ月余り。ベルちゃんは多頭飼育崩壊の現場からレスキューされた“保護うさぎ”で、2020年12月中旬にトトちゃんの家にやって来たのです。

「最初は念のため隔離していたのですが、フリーにしてみると意外と大丈夫でした。1カ月くらいたつと、すごく仲良くなりましたね」

 ベルちゃんの里親になった辻川真理子さんは、2匹の距離感をそう話してくれました。

 

 実は、辻川家ではうさぎを飼う予定はありませんでした。「子供たちに保護犬の存在を知ってほしい」と考えた真理子さんがネット検索していたとき、偶然“保護うさぎ”の文字が飛び込んできたのです。

「保護うさぎというのは初めて知ったのですが、ちょうどその日がLIBERTY(リバティ)さんの譲渡会で、家から近かったので行ってみることにしたんです」(辻川さん)

 LIBERTYとは『一般社団法人LIBERTY』のこと。うさぎについて正しい知識を広めるため、啓発活動としてパネル展やセミナーを開催したり、必要に応じて保護・譲渡活動も行っている団体です。

 譲渡会にはかわいいうさぎがたくさんいました。娘の真帆ちゃんと息子の綾真くんは「飼いたい」と言いましたが、真理子さんは躊躇したそうです。「子供たちとトトだけでも大変なのに、うさぎまで…」。ただ、リバティ代表の藤田敦子さんが書いた、それぞれのうさぎの紹介文には心打たれて帰宅しました。

 

 ベルちゃんは福井県で多頭飼育されていた中の1匹でした。子供向けイベントによくある「動物とのふれあいコーナー」に参加するために飼育されていたのですが、昨年夏に飼い主が病気で倒れ、飼育不能に。地元のボランティアさんを中心にレスキューが入ったとき、小屋には58羽のうさぎがいたといいます。

「まずは数の把握と、オスメスを分ける作業をしました」とリバティの藤田さん。不妊手術をしないまま雌雄一緒に小屋に入れていたため、どんどん増えてしまったようです。

「小屋はそれなりの広さがあり、飼育するための工夫もされていました。うさぎのことを粗末に扱っていた感じではなかったけれど、お世話が追いつかなかったんでしょうね」(藤田さん)

 

 うさぎは繁殖力がとても強い生き物。猫などと同じ“交尾排卵動物”で、交尾刺激によって排卵、受精が起こるため、高い確率で妊娠します。

「メスは生まれて3、4カ月で子どもを産める体になり、決まった発情期はなくいつでも妊娠できます。また交尾時間が20秒から30秒と短いので、飼い主が気づかないことも多いですし、生理学的にいえば、出産したその日に妊娠できる。種類にもよりますが、1回に6、7匹出産するうさぎもいるので、あっという間に数が増えてしまいますよね」(藤田さん)

 こうした知識がないままうさぎを飼い、多頭飼育に陥るケースが後を絶たないそうです。藤田さんがざっと挙げてくれただけでも、「静岡で200匹、仙台で80匹以上、滋賀でも100匹前後…」。それらはすべて一般の飼い主だったそうですが、学校現場でも100、200といった信じられない数のうさぎが小屋を埋め尽くしていたことがあったとか。学校には大人がたくさんいるのに…と思ってしまいますが、「無関心な大人が多いんですよ」と藤田さんは表情を曇らせます。

 

 そんな過酷な環境から救出されたベルちゃんは、約1カ月半のトライアル期間を経て、正式に辻川家に迎えられました。ということは、綾真くんの生活態度がご両親に認められた?

「いろいろありましたけど(苦笑)、朝起きるとすぐにベルのお水を替えたり、お世話はちゃんとしていますね。ベルとの出会いで家族みんなが保護うさぎのことやうさぎの飼い方を知ることができましたし、子供たちにとっていい学びになっていると思います」(辻川さん)

“命”と向き合うことで私たち人間が教えられることはたくさんあります。その学びを目的とした学校で命が粗末に扱われているとしたら…こんなに悲しいことはありません。

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