新型コロナウイルスに感染し、昨年11月にホテルで宿泊療養したという大阪府在住の男性(40代)から、まいどなニュース編集部に「(血液中の酸素濃度を測る医療機器)パルスオキシメーターがホテルに1個しかなかったが、不十分ではないか」と疑問の声が寄せられた。時間帯によっては使用待ちの列ができることもあったといい、男性は「使用後に消毒しない人もいたので、陽性者の自分でも使うことに不安と抵抗を覚えた」と振り返る。厚生労働省の見解や、近隣自治体の設置状況を取材した。
男性によると、宿泊療養した大阪市内のホテルは部屋が数百室ある規模。1階が感染者と職員のゾーンに分けられており、そこで入退所時の説明を受けたり、食事を取りに行ったりするようになっていたという。部屋に自由に持ち帰ることができるティッシュやお茶、歯ブラシなどのアメニティ類が並ぶ中、共用のパルスオキシメーターが机の上に1個だけ置かれていたそうだ。
「看護師さんに体調不良を訴えた際、食事を取りに来るついでに測るよう言われました。1階に降りると、決して広くはないスペースに、食事を取りに来た十数人の行列と、部屋に帰るためのエレベーターを待つ行列、さらにその中にパルスオキシメーター待ちの列があるんです。正直、ものすごく“密”だと感じました」と男性は証言する。
ホテルに1個…厚生労働省の見解は
厚生労働省は「宿泊施設において、看護師等が健康観察を行う際に、必要に応じて宿泊施設に適切な数のパルスオキシメーターを備えつけ、酸素飽和度や呼吸数の確認により健康状態を把握することが重要」としている。満室ではないとはいえ、数百室規模のホテルに1個というのは、果たして「必要に応じた適切な数」なのか。
担当者に確認すると「地域ごとに事情は違うので、何人にいくつあるのが“適切”か、ということは一概には言えない。実態を一番わかっている現場で判断してもらいたい」とのこと。ただ、「逆にその規模のホテルで1個じゃないといけない理由でもあるのでしょうか?」と訝しくは感じたようだ。
大阪府「今後は宿泊療養者全員に配布する方針」
大阪府によると、11月時点では、パルスオキシメーターは各ホテルの共用スペース(受付)に1個と、診察室と呼ばれる相談スペースに1個の計2個を備えていたという。少なくとも、男性が見た「共用スペースに1個」というのは事実だったようだ。11月頃までは、入所時に全員測った後は随時、療養者がそれぞれ必要に応じて計測する形を採っていたが、内部で「もっと増やした方がいいのでは」との声が上がり、12月頃から設置数を拡充。2月現在は各ホテルの受付に7、8個を常備し、療養者は毎日計測するようになっているという。
担当者は「これまでも健康相談などの際には計測していたが、今後は宿泊療養者全員に配布できるよう準備を進めている」と強調。府としても40歳以上の自宅療養者にパルスオキシメーターを配布する方針を打ち出すなど、さらなる「態勢強化」に努めるという。
兵庫県と京都府は
では近隣の自治体はどうか。
隣の兵庫県は「基本的に全員に配る方針」だが、現時点ですでに行き渡っているホテルもあれば、間に合っていないホテルも。施設によって違いがあるのは、パルスオキシメーターのニーズが依然として高く、納品が遅れているのが理由らしい。それでも「酸素濃度の数値は健康状態を評価する基準になるので、宿泊療養が始まった当初から最低でも各フロアに1個は用意している」という。
また京都府の場合は、これまでホテルの各フロアに2個ずつ程度だったが、第3波以降は発熱や呼吸のしにくさを訴える人が増えたことなどから、「医師や看護師が必要だと判断した人には1個ずつ渡し、それぞれの部屋に置いてもらうようにしている」。やはり病院搬送などの判断の目安になるため、「計測しやすい環境を整えることが大切」との見解だった。
「看護師やスタッフには感謝」
声を寄せてくれた男性は、他にも食事の面などで気になることがあったという。
「非常に偏っていると感じました。豪華にしてほしいとまでは言いませんが、私の宿泊中は電子レンジもなく、弱った体に冷えた揚げ物はきつかったです。割り当てられた部屋も換気のためにものすごく寒く、とにかく療養者に対する心配りが足りていなかったように思います」
「それでも、中で働かれている看護師さん、スタッフの皆さんはできる範囲で一生懸命働いてくださっていました。そのことには感謝したいです」