コロナ禍直撃の貧困家庭を支援するため13日に食糧配布 企画したのはFBIに逮捕された男性!?

北村 泰介 北村 泰介

 新型コロナウイルス感染拡大に伴って失業者が増え、「食べ物がない」という貧困家庭がコロナ前より増えている現実を受け、民間で食料支援をする動きが出ている。今月13日に神奈川県茅ケ崎市で約10トン分の食料を無料配布するNPO法人「グッド・ファミリー」の代表・KEIさんに話をうかがった。

 KEIさんは少年時代にヤクザとなり、20代で財を成すが、ハワイでFBIに逮捕されて米国の刑務所で10年以上も服役。「チカーノ」と呼ばれるメキシコ系米国人との所内での交流を経て、出所後、帰国してアパレルブランドを立ち上げた。その生きざまをつづった著書やドキュメンタリー映画、コミックなどが反響を呼び、自身が立ち上げたNPO法人では虐待や育児放棄などにあった施設の子どもらとマリンスポーツなどを通じて交流を続けている。

 食糧支援の会場は神奈川県茅ヶ崎市の中央公園。カップ麺、米、レトルト食品、飲料水、調味料、缶詰、粉ミルク、菓子などを募った。

 その内容について、KEIさんは「フードバンクで配布しているのは近くの農家から提供された野菜が多いが、電気やガス、水道を止められている家庭では調理ができない。生のキャベツをかじるより、お湯だけもらってカップヌードルやレトルトカレー、パックのご飯などの方がいい」と説明した。

 割合は、カップ麺が6割、米が2割、残りは水、レトルト食品、缶詰、ミルク、おやつ等だ。同氏は「今回は2トントラックに5台分、約10トンの支援物資が集まりました。グッド・ファミリーの全国の支部でも情報を拡散してくれて、1000件くらいの問い合わせがあった。2月13日の土曜日にできるだけ配布し、余ったらNPO法人に置いて、後日取りに来ていただきます」という。

 実現までの道のりは、KEIさんが「配布場所を借りるため、市の担当部署に電話しても、違う部署にかけるように言われ、たらい回しにされて時間がかかりました」と明かすように、決して容易ではなかった。同氏は「市長秘書の知人を通して市会議長も交えてテーブルにつくことができ、話し合いができた。食料を取りに来てくれる人がいないとやっている意味がない。行政の方でチラシを作って母子家庭に配布していただいた」と振り返る。

 KEIさんは「知人の警察官によると、自殺者のほとんどが食べ物がないからだということです。司法解剖すると胃袋に何もなく、所持金も3円とか6円とかで、『このままでは餓死する』と鬱になって自殺するパターンが多いと。コロナ禍が始まって1年。感染して亡くなる人より、自殺する人の方が多いのが現実です」と語る。

 警察庁によると、2020年の自殺者数は2万919人(男性1万3943人、女性6976人)。同年10月は2199人、11月は1835人、12月は1694人で、特に多かった10月はコロナ禍前の19年同月に比べて男性が約20%増だったのに対し、女性は約80%増だったという。

 コロナ禍に伴う失業者は小売業やサービス業に従事し、かつ非正規雇用の比率が多い女性の割合が高い。就労できない年齢の子どもを抱える母子家庭では、経済的な打撃も計り知れない。貧困に直面し、日々の食事もままならない子どもたちがコロナ禍で増えている。

 KEIさんは「コロナ感染拡大により、私たちの生活は大きく変わりました。母子家庭の母親の失業が増加しています。日常や将来への不安から、鬱を発症する人も増えています。そして自殺者も増加し、深刻な問題になっています。仕事を失って収入が減少し、困窮している人たちのために皆様のお力を借りながら食料支援活動を行っていきたい。他のいろいろな所で食糧配布をする人が増え、少しでも自殺を防ぐ助けになれば。そのことを国にももっと考えて欲しいと思います」と訴える。

 今年還暦を迎えるKEIさん。昨秋に出版した近著「昭和に生まれた侠の懺悔」(東京キララ社)では「弱者である立場にいる訳ありの子供たちの面倒を見ている。まさかこの俺が…」「子供たちの笑い顔を見ていると、なんとか幸せになってほしい。血が繋がっていなくても、子供の笑顔は何物にも代えがたい!」とつづっている。

 今後に向け、KEIさんは「マリンスポーツは海の上で密にならないので、コロナ前よりやる人が増えている。今年の夏も子どもたちをジェットスキーに乗せて遊ばせてあげたい。コロナ禍でたまったストレス解消になりますから」と前を向いた。

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