復興の象徴、連覇したオリックスのスラッガーは今 イチローに負けない「神戸愛」、中高生を指導する日々

あの人~ネクストステージ

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 現在のオリックスで16年の現役生活、コーチ、スカウトなど17年を合わせ33年もプロ野球界に身を置いてきた藤井康雄さん(58)は、昨年から神戸市の総合建設業・株式会社共栄組に籍を置きながら中学、高校のアマチュア球界の指導者として活躍している。

 毎年1月17日に必ずテレビ画面に藤井さんの姿が映し出される。1995年にオリックスが優勝した際「思い出しますよね」と、一塁手としてウイニングボールをキャッチ。阪神・淡路大震災により甚大な被害を受けた神戸を本拠地とするオリックスの優勝は、復興の象徴として今も語り草になっている。

 広島県福山市生まれだが、中学を卒業すると野球留学で大阪・泉州高に進学。卒業後は社会人野球のプリンスホテルを経て86年度ドラフト4位で阪急に入団。身売りとともに89年から神戸に居を構え現在も住み続けている。

 通算1641試合に出場し1207安打、282本塁打で主軸選手として活躍。ソフトバンク、オリックスの指導者としては神戸に家族を残し単身赴任だった。「イチローとかぶるところがあるんでしょうけど、自分が育った場所だから」と神戸に愛着を持つ。

 スラッガーらしい勲章もある。通算満塁本塁打14本は歴代3位。通算代打満塁本塁打4本、シーズン代打満塁本塁打3本は日本記録でもある。「いろんなメディアに取り上げられ、現役を終わってみてそこそこ名前を残せたのかなというのがある」と振り返った。

 95、96年にはイチローらとともに連覇を達成した。現在は「天下のイチローですからおいそれと話はできませんよ」と苦笑いを浮かべたが、「メシ屋が一緒になったらあいさつに来てくれる」と先輩後輩としての付き合いはある。「若いころには自宅にカレーを食べにきてましたから」。後輩の面倒を見ていたから今がある。

 イチローだけでなく後輩に慕われている。オリックス2軍コーチ時代の一昨年夏、元チームメートで後輩の社会人野球・関西タクトの斉藤秀光監督を通じて神戸中央シニアの山田高広監督(現総監督)を紹介された。打撃コーチとして4スタンス理論を採り入れていた藤井さんは「山田監督が理論派なんですよ。中学野球にも4スタンス理論を採り入れているという話をした」と意気投合。一昨年限りでオリックス退団が決まると山田監督に誘われ神戸中央リトルシニアのコーチに就任した。

 山田総監督が本部長を務める共栄組は、地域社会との連携を大切にしている。野球指導もその一環で、同社に籍を置きながら「会社が理解を示してくれている」と、春から関西創価高の外部指導者として週に1度、高校生も指導。シーズン中にはプロ野球のテレビ解説者としても活動している。

 プロを離れアマチュア指導者一年目はコロナ禍という未知の苦労もあった。自主練習から緊急事態宣言が解けてからはグラウンドでの練習がはじまった。「プロは繊細さがあり、選手の感覚というものがある。アマチュアの方が変化が大きい」と目に見えて成長する姿にうれしそうだ。土、日、祝日は午前7時から午後9時半までグラウンドで指導を続ける。「プロよりも長いのにびっくりしました」と驚きの表情も見せながら、グラウンドに立つ喜びを感じている。

 今後について「せっかくアマチュアの指導をさせてもらっている。新しい発見もありますし、勉強もさせてもらっている。もう一度勉強してプロの話があるならチャレンジしたい」とNPB復帰に意欲を示した。

(まいどなニュース/デイリースポーツ・岩本 隆)

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