新型コロナウイルス禍中で迎える今回の年末年始。例年よりも外出を控え、自宅にいる時間が長くなる人が多くなりそうだ。そうした中、ゆっくりと過ごす際の参考になればと、岡山市内の書店、レンタルDVDショップにお薦めの作品を紹介してもらった。
岡山市北区北長瀬表町の書店「本の森セルバ ブランチ岡山店」の文芸書担当・横田かおりさん(34)の一押しは、昨年の本屋大賞に輝いた瀬尾まいこさんの新刊「夜明けのすべて」(水鈴社)。
PMS(月経前症候群)でイライラが抑えられない美紗と、パニック障害の山添は小さな金属会社の同僚。つらい症状を抱える2人が近づき、周りの人にも支えられながら笑顔になっていく心温まる物語が展開される。
「恋に落ちるわけでもない2人の関係性ややりとりが絶妙でいとおしい。いつかは明るい夜明けが来ると希望が持てるような内容もいい」と説明する。
今年発刊の書籍では、人気作家・伊坂幸太郎さんの短編集「逆ソクラテス」(集英社)、青山美智子さんの「お探し物は図書室まで」(ポプラ社)、小川糸さんの「とわの庭」(新潮社)も薦める。
「家での時間が長い今、お子さんに読み聞かせを」と呼び掛けるのは、啓文社岡山本店(岡山市北区下中野)の児童書担当・佐野有希さん(40)。選んだのは、絵本作家工藤ノリコさんの人気シリーズ最新作「ノラネコぐんだん ケーキをたべる」(白泉社)だ。
店のケーキを盗み食いした猫軍団が、最後は反省してケーキ作りを手伝う―というほのぼのする展開。丸っとしたフォルムの猫たちが“ちょいワル”な悪事を働くが、なんとも憎めない。「ふふっと笑えるシーンが多く、親子で癒やされるはず」と太鼓判を押す。
パンダ専用銭湯の様子を描いた「パンダ銭湯」(絵本館)をはじめ、おせちや正月遊びを説明する「開運えほん」(あかね書房)や、鏡餅を題材にした「おもちのきもち」(講談社)といったこの時期にぴったりの作品も推薦する。
TSUTAYA古新田店(岡山市南区古新田)の本岡美咲さん(22)は、今秋に公開となった映画「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」のテレビアニメシリーズを挙げる。戦争にかり出され、感情を持たない少女だったヴァイオレットが、戦後に就いた手紙の代筆業を通して愛について知っていくというストーリー。
美麗な絵で知られる京都アニメーションの作品で、丁寧に作り込まれた重厚な世界観が魅力だ。「コロナ禍で親しい人と会えなかったり、逆に家族との時間が増えたりした1年。物語を通して、家族愛や恋愛、親愛…。さまざまな愛の形について改めて考えてもらえたら」と話す。
他にも、4歳男児の成長を描くアニメ映画「未来のミライ」(細田守監督)や、人気映画「ハリー・ポッター」シリーズを推す。