〈規格外トマトはボーナスです。ツイッターの優しい世界…〉と投稿された画像に、多くのツイッターユーザーが心動かされました。市場では「形が悪い」「売れない」トマトは、見方を変えれば「かわいい」「おもしろい」トマトでした。新型コロナウイルス禍で大変な最中、トマトとSNSのちょっといいお話です。
「おーい」「やあ!」。投稿された画像のトマトからそんな声が聞こえます。人に見えてしまう不思議、いわゆる心理学のパレイドリア現象です。多くのツイッターユーザーが声なきトマトの声を聞いたのではないでしょうか。
トマトの年間消費量が全国一を誇る新潟県で、トマトとトマトジュースなど加工品の直売所を営む「曽我ファーム」は、フルーツトマト(高糖度トマト)をはじめ4種類ほどを育て、年間70トンの生産量があります。
トマト農家にとって、避けられないのが規格外品です。曽我ファームはフルーツトマトをおいしくするために、あえて低水分・低温というストレス状況で育てます。そうすると、規格外品が出やすくなり、フルーツトマトでは約3割が規格外になるそうです。
投稿後、「絶対ポケモンの世界にいる」などキャラクターに例えて盛り上がる中、「定期的に購入したい」「ご縁があればぜひ店で使いたい」など市場に出回らないことを惜しむ声もありました。曽我ファームの代表、曽我新一さんに聞きました。
―規格外品は流通には乗せにくいのでしょうか。
「対面の直売所を経営していますが、お客さん(60代以上が主)は圧倒的に傷のないものきれいなもの形のよいものを選びます。形が悪くても買うよ!と口では言えても消費行動は圧倒的に形のよいものに傾きます。これは人間の購買心理として仕方がないのかもしれません」
―投稿にあった「規格外品はボーナスです」とは。
「ツイッターで、面白い形のトマトを見た方、20代でしょうか、直売所に来てくださり、面白い形のトマトをぜひ買いたいとおしゃってくださいました。見た目も価値があるということで、1個100円で販売しました。規格外品は春に多く出るのですが、これを受けて今年はインターネットであえて規格外品を販売したところ予想以上に売ることができました」
―トマト以外にも規格外の野菜を買う人が出てくれば、食品ロスも減らせそうです。
「若い方には規格外品へのハードルが低いのかなと思います。ニッチなマーケットですが規格外という新たな価値を創造できれば。実店舗よりも若い方とつながりやすいSNSの方が販売しやすいと感じています」
―コロナ禍だからこそ、でしょうか。
「当農園もコロナ禍で少なからずダメージを受け、今年は法人化して9年目で初めて赤字になりましたが、SNSを通じてトメイトゥや規格外の取り組みなどを発信し、拡散してもらうことで、新たな経営スタイルの形が見え始めました。今まで直売所とJA出荷の販売スタイルでしたが、もっと柔軟にSNSを通じてトマト販売を増やしていきます。1本2000円のフルーツトマトケチャップが爆発的に売れていますので、これも主軸にしていければと思います。今後10年でICTを活用した無人販売農園を開設したいと考えています。
■曽我ファームのページはこちら→ https://sogafarm.base.shop/