「心の支えは猫」と言い切る三島由紀夫、10頭を超える猫を飼い、お気に入りのものは死後はく製にした谷崎潤一郎…。日本を代表する文豪たちの意外な猫好きエピソードがSNS上で注目を集めている。きっかけになったのはマルチクリエイターの進士素丸さんの「猫と文豪」という投稿。
冒頭で紹介した三島、谷崎のものに加え、夏目漱石、中原中也ら4人の文豪の猫好きエピソードは意外なものもあれば「さもありなん」というものまでさまざまだが、根底にこじらせ感がある点は共通していて興味深い。
この投稿に対し、猫好き、文学好きとおぼしきSNSユーザーたちからは「中也氏の「やい、哲学者」は言いたくなって時々うちのコたちに言ってしまいますね〜。」「うん、まあ、剥製にするのは抵抗があるけど、谷崎がイヌ好きだったら逆に変だから」「今は亡き知り合いのばあさんの家に坂口安吾が遊びに来てたと聞いています。確かその時、黒猫を抱えてたようです。バーのママの猫だったかな」「谷崎先生が飼ってた猫がほとんどメスっていう情報に笑いました。ネコのSっ気のあるところが谷崎先生にはたまらなかったんでしょうね。冷たくされたりとか」など数々のコメントが寄せられている。
進士さんにお話をうかがってみた。
中将タカノリ(以下「中将」):文豪たちの猫好きエピソード、いずれも興味深い内容でした。進士さんが文豪たちと猫のかかわりをまとめようと思ったきっかけをお聞かせください。
進士:猫と物書きは相性が良いのか、猫を飼っていた作家は多数いらっしゃいます。その中でも、室生犀星が飼っていた猫のジイノが火鉢にちょこんと前足を乗せて暖を取っていて、それを愛おしそうに見つめる犀星先生のとてもかわいい写真があるんですが、その写真を見たのが、猫と作家の関係性について意識するきっかけになったと思います。
中将:進士さんが特にお気に入りのエピソードをお聞かせください。
進士:内田百閒という夏目漱石のお弟子さんで芥川龍之介ともとても仲の良かった作家がいるのですが、その百閒先生がノラと名付けた猫を飼い始めるんです。それはそれは可愛がっていて家族のように接するんですけど、ある日突然ノラが帰ってこなくなるんです。それで百閒先生はノラの事が心配で心配で仕事も手につかず食事も喉を通らない程になってしまって、心配した弟子や友人たちがノラ大捜索を始めて…というエピソードがお気に入りです。詳しくは「よみタイ」(集英社)で連載中の「ブンゴウ泣きたい夜しかない」(2020年12月2日公開分)に書いていますので宜しければお読みください。
中将:今回の大反響へのご感想をお聞かせください。
進士:多くの方に見て頂けて嬉しいです。近代文学に興味を持つ一助になれれば幸いです。
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▽「進士素丸(しんじ すまる)」さんプロフィール
1976年生まれ。ライター・文筆家。2019年、太宰治、芥川龍之介、坂口安吾、泉鏡花、中原中也ら27人の作家、詩人のどうかしてる逸話を集めた初の著書「文豪どうかしてる逸話集」を出版。
現在、集英社ウェブマガジン「よみタイ」にて、文豪たちの逸話を紹介する「ブンゴウ泣きたい夜しかない。」を連載中(隔週水曜更新)。
・「ブンゴウ泣きたい夜しかない。」(集英社):https://t.co/oHxLOqxkeD
・「文豪どうかしてる逸話集」(KADOKAWA):https://t.co/WDN9kSpcSQ
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可笑しくも哀しい文豪たちと猫のエピソード…それはもはやそのままでも「文学」として成立してしまいそうだ。