来夏五輪は「人類が新型コロナウイルスに『打ち勝った』証」??
私はこの言葉に、ちょっと違和感を感じます。
①「過去に学び、未来を正しく見通す」という視点で考えると、人類の歴史は、感染症に対峙してきた歴史であり、新興感染症は、今後も繰り返し出現します。であれば、望まぬことであっても、「ウイルスとともに生きていく」という現実を受け入れざるを得ません。「打ち勝たねばならないのだ」と考えると、いろいろツラくなりますし、また人類は、地球の『支配者』ではないので、打ち勝って強者として頂点に立つ、ということではないように思います。
②果たして、世界で来夏までに「収束」するでしょうか?ワクチンは開発の目途が立ちそうではありますが、広く世界中に普及して、安全・安心に開催できるだろう、というのであれば、それは少し楽観に過ぎると思います。
③新型コロナウイルス感染症以外にも、世界の人々は多くの感染症に苦しんでいます。そうしたものには、人類は「打ち勝たなくて」いいのでしょうか?例えば、年間死者数は、結核130万人、HIV/エイズ69万人、マラリア41万人、汚れた水を主原因とする下痢等で命を落とす乳幼児は、年間30万人です。先進国にとっては、新型コロナが眼前の課題ですが、多くの途上国にとっては、たとえ新型コロナに「打ち勝って」も、苦難の道は続くのです。
私は、「グローバルである」ということは、今世界の中で何が起こっているか、それに対して、自分や自国はなにができるのか、世界の中で、自分や自己を相対化して考える視点を持てることだと思うと、常々申し上げています。
「今」や「自分・自国及び価値を同じくする人たち」だけではなく、過去・現在・未来という時間軸を見通し、そして、地理的にも価値観的にも、大きく広げて、見て、考えることが、求められていると思います。
(※)「五輪」はオリンピックのことですので、「東京五輪・パラリンピック」が正式な呼称ですが、便宜上「東京五輪」と記載させていただきます。なお、わたくしは、厚生労働省で障がい福祉に携わり、東京五輪・パラリンピック大臣政務官を務めさせていただき、パラリンピックも、非常に重要と考えております。
(参考)
https://www.unaids.org/en/resources/fact-sheet
http://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/2018/07/Global-Topics-Vol.1.pdf
https://www.who.int/publications/i/item/world-malaria-report-2019
https://www.unicef.or.jp/special/17sum/