奈良国立博物館で10月24日から11月9日にかけて開催されていた「第72回正倉院展」の出展品に描かれた「天平のロック少年」がSNS上で大きな注目を集めている。
この少年の存在を「正倉院展で目が釘付けになってしまった。「墨絵弾弓(すみえのだんきゅう) 」に描かれた天平のロックな少年❗ロングブーツにプリーツのついたおしゃれな服を着てノリノリで琵琶を弾いている😆」と紹介したのは日本画家で尼僧の中田文花(なかた もんか)さん。
少年は墨絵がほどこされた弓「墨絵弾弓(すみえのだんきゅう)」の中にさまざまな楽人(楽器の演奏家)とともに描かれているのだが、ロングブーツにプリーツ付きの服で、片足を跳ね上げて琵琶を弾くその姿はたしかに周囲から浮いており、どこから見てもハードロック方面のロックミュージシャンに見えてしまう…。
中田さんはどのようなシチュエーションでこの少年を発見されたのだろうか?お話をうかがってみた。
中将タカノリ(以下「中将」):中田さんは正倉院展にはよく通われているのでしょうか?どのようなシチュエーションでこのロック少年に気付かれたのかお聞かせください。
中田:正倉院展には毎年欠かさず行ってます。奈良時代の芸能である『散楽』に興味があったので、弾弓に約100人ほど描かれた散楽図を一人一人丁寧に見ていく中、この少年と目が合って釘付けになりました。
中将:このロック少年のどのような部分に魅力を感じられるのでしょうか?
中田:天平時代のイメージを覆すような躍動的なポーズで琵琶を弾き、ロングブーツにプリーツのついた服装もおしゃれ。絵師は想像ではなく、この少年をその目で見て描いたと感じています。
中将:ご自身でも絵を描かれる中田さんならではの洞察ですね。今回の大反響へのご感想をお聞かせください。
中田:まず、模写をして、ネットに上げる前に知名度がある少年なのか調べました。するとロック少年と先に名付けていた方がすでおられ、また10年ほど前の正倉院展グッズのクリアファイルのデザインにもなっていたと知りました。伝え方の一工夫で、多くの人に知ってもらえるきっかけになってよかったです。いつかまた、墨絵弾弓が出品される時、このロックな少年が話題になればと期待します。
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【プロフィール】
▽中田文花(なかた もんか)さん
大阪府出身。日本画家、漫画家、造形作家、舞楽舞人(女人舞楽原笙会)、尼僧(華厳宗)、歌人(ヤママユ)。画家としてはお水取り、花会式、聖霊会、おん祭などを主な題材としている。
・公式サイト:
http://bunchoji.com/
・ちいさな画集 「知恩院祈りの美」(創教出版):
https://www.amazon.co.jp/dp/4915728536/
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ロックという概念は無くとも、通じる気質も持った人はいつの時代も存在するのだろう。このロック少年を見ていると、千数百年前に生きた人々の姿がありありと浮かんでくるようだ。
毎年出展品の変わる正倉院展なので次がいつかはわからないが、このロック少年に会ってみたい方はふたたび墨絵弾弓が出展されるタイミングを楽しみにされたい。