マスク専門店が…駅のホームにまで進出! 運営スタッフが明かす、売れ筋商品からみる「当世マスク事情」

平藤 清刀 平藤 清刀

この秋、JR阪和線・天王寺駅の降車ホームにマスク専門店ができた。以前はシュークリーム店があった場所だ。ウィズコロナの日々で必需品となったマスクだが、こんなところにまでマスクの専門店ができるとは…。電車の待ち時間の間をぬってまでマスクを必要とする人々がたくさんいるということだろうか。お店をのぞいてみると大人用から子供用まで品揃えは豊富でバラエティーに富んでいる。

店舗を運営する株式会社寺子屋の営業部主任・松村宗さんに伺った。

「JR西日本デイリーサービスネットさんから弊社に出店の依頼がありまして、マスク専門の店舗として9月16日から営業しています」

コンパクトなスペースに約80アイテム、1000点以上のマスクがズラリと並ぶ。

 ホームの空き店舗を使って出店

どんな人が買っていくのだろう?

「あらゆる年齢層、男女を問わず来てくださいますが、7対3くらいの比率で女性が多いです」

常連客も多いという。

「自分が使ってみて気に入ったといって、電車の待ち時間を利用して、友達とか家族に買って行かれます」

お客さんが多く訪れる時間は、やはり16時~18時頃の帰宅時間帯と、お昼を挟んだ11時半~14時頃にも多くなるという。

「平日は11時から19時半まで。土日はもう少し早めに開けています。ピークの時間帯とお客さんの動きを全般的に見ると、勤めている方の帰宅時間と主婦層の動きに合っている感じです。土日にはお子さんも多く訪れます」

子供が土日に多く来店するのは、学校が休みというほかにも理由があるようだ。

「『鬼退治布マスク』とか『鬼マスク』という“和”をイメージしたデザインのマスクがあります。『鬼』の字を見た子供がまるで吸い込まれるように入ってきます」

もしかして、これは「鬼滅の刃」の人気ゆえだろうか。

「そうでしょうね。『鬼』が入っているだけで売れ行きが明らかに変わってきます」

そして女性は、服の色に合わせてマスクの色を選ぶ傾向があるらしい。

「今では、マスクもファッションアイテムのひとつになっていますね。色違いで何種類か買って行かれます」

とくに「I♡MASK(アイ・ラブ・マスク/ラブはハートマーク)」シリーズは手ごろな値段(1枚400円)と相まって、カラーバリエーションが豊富で人気が高く、品薄気味だという。

わずか数カ月でさまざまに進化した布マスク

マスクを着用することが日常の当たり前になったこの数カ月間で、各メーカーがより高機能なマスクの開発・製造にしのぎを削った結果、マスクは急速な進化を見せている。

「当店にある商品だけでも、材質は布やウレタン。機能的には、耳掛け紐の長さを調節できたり排気弁が付いていたりします」

排気弁付きのマスクが気になったので、さらに訊いてみた。

「小さな弁が付いていて、息を吐くときに弁が開いて呼気を出すためメガネが曇らないのです。排気弁にはフィルターが入っていますから、ここから飛沫が漏れることはありません」

そして「当店でいちばんの優れモノです」というのが、アウトラストという素材でつくられた高機能マスク。

「暑いときは肌を冷まし、寒いときは肌を温める素材です」

パッケージの説明によると、ウィルスを減少させ特定の細菌の繁殖を抑制する効果もあるらしい。

「お値段は高めですが売れています。メーカーに在庫がなくて、再入荷の予定もありません」

マスク専門店をやってみて分かったこと

「マスク専門店をやってみて、あらためて分かったことがあります」と、松村さんはいう。それは、マスクを求めるお客さんのニーズが、じつに多種多様であることだ。

「マスクの形状ひとつとってみても、鼻に当たる部分が立体になっているほうがいいというお客さんもいれば、平面のほうがいいというお客さんもいます。あるいは、両端の幅が狭いほうがいいというお客さんもいれば、広いほうがいいというお客さんもいて、たかがマスクですが人それぞれ好みが分かれることを再認識しました」

ところで、不織布マスクの価格が一時は1箱50枚入りが店頭で数千円にも跳ね上がっていたが、やっと市場に出回るようになって「マスクプラザ」では1000円まで下げることができた。

じゃぁ、よく売れているでしょうと訊いてみたら、「今は布マスクのほうが売れているのです」という返事が返ってきたのは意外だった。前述したように、布マスクのファッション性を楽しむ人が増えたからだろうか。

仕方のない事情があるとはいえ、マスクを着けるのであればファッション性を高めて楽しんでしまおうというニーズがある。だからさまざまに進化もするし、多くのバリエーションも生まれる。お店は11月30日まで期間限定で営業とのことだが、しばらく続けてほしいと思いつつ取材を終えた。

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