アニマルコミュニケーションで動物の心の声を聞く!保護・譲渡活動に新たな扉

岡部 充代 岡部 充代

 

 犬や猫に限らず、うさぎや鳥、爬虫類など多くの動物たちの保護・譲渡活動が全国各地で行われています。共通の思いは「命を救いたい」「幸せになってほしい」というもの。実際、そうした活動を通じて新しい家族が見つかり、幸せをつかんだ動物は数多くいます。

 ただその一方で、なかなか里親が見つからなかったり、一度は譲渡されたものの何らかの理由で戻ってきたり、里親宅から逃げ出したり…という事例も少なくありません。譲渡が進まなければ新しい子を迎え入れられないわけで、適切なマッチングによるスピーディーな譲渡は、継続的かつ円滑な保護・譲渡活動において重要なファクターと言えます。

 

 そんな活動の現場で新たな扉が開かれようとしています。それは、保護・譲渡活動にアニマルコミュニケーション(以下、AC)を取り入れようというもの。ACとは、アニマルコミュニケーターと呼ばれる人がテレパシーを使って動物たちと会話し、心を落ち着かせたり、行動の理由や望みなどを聞く行為のこと。実際に体験した人や、動物系テレビ番組で見たことがある人もいるのではないでしょうか。

 11月1日から本格始動したこの取り組みの発案者は、ハワイ在住のアニマルコミュニケーターShioriさん。Shioriさんは約5年前からハワイ最大級のアニマルシェルター『Hawaiian Humane Society』でACとレイキ(ヒーリング法の1つ。日本発祥で海外では代替療法として認知されている国もある)のスキルを使ってボランティア活動をしています。長期間シェルターに滞在している犬、噛み癖、吠えといった問題行動がある犬、怯えやストレスがひどい犬を主に担当してきたそうですが、その数は年間100頭を超えると言います。

「最初はシェルターの動物たちを癒すことができればと思って始めたんです。でも、しばらくすると、ACで動物たちと話しているその場で飼い主候補が現れたり、長い間家族が決まらなかった犬が、2~3日後にはウェブサイトの譲渡対象ページからいなくなったりしていることに気づきました。これは『引き寄せの法則』によるもの。私は必ず『どんな家族とどのように生きていきたいか』を犬に確認するのですが、犬の考えを整理して言語化してあげることで、実際に望み通りの家族が現れてくれるんです」(Shioriさん)

 なんとも不思議な現象ですが、実際、こんなことがありました。シェルターにいたBones君は2度、新しい家族のもとへ巣立って行きましたが、2度ともシェルターに逆戻り。返しに来たのは人間ですが、そう仕向けたのはBones君で、Shioriさんに「僕が求めるヒトじゃなかったから」と理由を伝えてきたそうです。

「忠誠心が強く、自分が仕える飼い主は自分で決めたいタイプの子。私がACで話した2日後には譲渡対象ページからいなくなりました。その後シェルターには戻ってきていませんから、理想の家族に出会えたということでしょう」(Shioriさん)

 

 Shioriさんが『どんな家族とどのように生きていきたいか』を尋ねると、落ち着いた老夫婦と穏やかに暮らしている、小さな子供たちと楽しく遊んでいる、若い女性に寄り添い癒している…など、様々なイメージを伝えてきてくれるのだとか。そこで『引き寄せの法則』が発動され、時間を置かず理想通りの里親希望者が現れれば譲渡促進につながりますし、犬が求める家族像をシェルタースタッフと共有すれば適切なマッチングを行うことができます。

「出戻りや脱走はマッチングのミスによることが多い。それは犬にとっても家族にとっても不幸なことです。ACを取り入れれば両者のストレスを軽減することができるのです」(Shioriさん)

 希望を聞くのは保護動物だけではありません。里親希望者の家に先住動物がいる場合、その子たちに「新しい家族を迎えてもいいか」を確認するのが先。許可を得てから保護動物との相性チェックを行うのが大切だと言います。

「優先すべきはすでにその家にいる動物。新しい子が来て、その子たちがストレスを抱えては意味がありません」(Shioriさん)

 

 ハワイ在住のShioriさんが日本でこの取り組みを始めようと思ったのは、ACの技術を身に着けるためのセミナー(現在はコロナ対応でオンライン開催)受講者に保護・譲渡活動に携わる人たちが増えたから。まずはその受講生が所属する団体から始め、ゆくゆくは「1団体に1アニマルコミュニケーター」を目指すと言います。

「ACで分かることと、実際にお世話する中で分かることがあります。その2つを合体させて譲渡できれば、動物もヒトも幸せになれるんです」(Shioriさん)

 この取り組みに参加する団体は複数ありますが、Shioriさんのセミナー受講者がいる『NPO法人しっぽのみかた』では、すでに譲渡スピードが上がり始めているそうです。

Shiori
ハワイ在住のアニマルコミュニケーター。1972年7月生まれ。大手通信会社勤務を経て2013年ハワイへ移住。翌年アニマルコミュニケーションと出合い、8か月後には米国でアニマルコミュニケーションビジネスを立ち上げる。「アニマルコミュニケーションに特殊能力は必要ない。誰にでもできる」と精力的にワークショップを開催。すでにのべ500名超が受講している。アニマルコミュニケーションを用いた保護・譲渡活動を提唱し、2020年11月に受講生たちと保護活動チームを始動。公式ホームページ https://www.achawaii.net/

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