IT関連企業が積極進出している関西のリゾート地とは?目指すのは”シラコンバレー”

山本 智行 山本 智行

 テレワークやワーケーションなど新たな働き方が注目を集める中、あの和歌山県白浜町にIT関連企業が積極的に進出しているという。11月1日には阪神阪急東宝グループで映画館経営や不動産事業を担う「オーエス」(大阪市)が運営するリゾートITビジネスオフィス「ANCHOR(アンカー)」がオープン。官民挙げて目指すは”シラコンバレー”だとか。

 和歌山のリゾートタウン白浜町が再び脚光を浴びている。今回完成したITビジネスオフィスビル「ANCHOR」は、真っ白な砂浜と澄みわたる美しい海に代表される白浜の雄大な自然の中で“暮らしながら働く”ことを実現しようとする試みのひとつだ。

 IT企業の誘致と集積を図るため、和歌山県と白浜町が補助制度を設けてバックアップ。選ばれたオーエスにとっても自社で運営する初めてのリゾート型のサテライトオフィスビルとなる。高橋秀一郎社長によると、取り組みのきっかけは2018年に新たな成長戦略を模索する社内の横断型プロジェクトで中堅若手社員から出された「暮らすことに重きを置いた働く場の提供」というアイデアから実現した、という。

 場所は海や市街地を望める高台にあり、ある銀行の元保養所を有効活用した。改修した建物は鉄筋コンクリート3階建てで延べ985平方メートル。50.4平方メートルから87平方メートルの貸室7室のほか、共有スペースやシアタールーム(多目的ルーム)などが設置されている。

 さらに、特徴的なのがピクニックガーデンやスカイテラスだろう。これは単に仕事をするだけのスペースではなく、入居企業同士はもちろんのこと、地元白浜の人々や企業と菜園で土に触れ、野菜を育てることで交流を図る狙いがある。すでに「ANCHOR」には東京でシステム開発などを手掛けているIT2社の入居が決まり、今後は地元の雇用にもつながっていきそうだ。

 この事業のプロジェクトリーダーでオーエス不動産事業部の淀友樹課長は和歌山県出身。地方から都会に出て就職しても介護などで退職を余儀なくされ、培ってきた技術や経験をいかす受け皿が地方では不足していることを痛感したことが背景にある。また過疎化、高齢化による厳しい現状を目の当たりにし、地方を活性化するには企業を誘致するオフィスそのものが必要だと感じたという。

 淀さんは「白浜町のすばらしい自然環境のもとONとOFFのリフレッシュができるのが大きな利点。実際に暮らすことで地元への理解と交流が生まれ、雇用や新しいビジネスチャンスの創出につながれば」と期待する。

 実際、コワーキングスペースやシアタールーム、野菜を育てたり、焚火を囲んだりできる屋外のスペースを充実させたのはそんな思いからきている。1日のオープンに先立って開かれた内覧会の参加者からは「新しいことをやりたくなった」「お風呂をリノベーションしたシアタールームは、映画館を経営する企業ならではでおもしろい」「屋上からは海も見えてリフレッシュできそう」という声が上がった。

 この記念式典には仁坂吉伸・和歌山県知事や井澗誠・白浜町長も出席した。オーエスの高橋社長は「ここ白浜の地に着実に錨(ANCHOR)を下ろし、当社が培ってきた事業ノウハウを新しい視点で投入し、入居企業のみなさま、地域の方々と一緒に成長を目指して行きたい」と意気込んだ。

 「白浜町をIT企業の集積する“シラコンバレー”に!」という県や町の活動はすでに10社以上の誘致、移住を成功させている。今後も「ANCHOR」のようなICTオフィスビルの整備を進め、積極的に企業を誘致していきたい考えだ。巨大ハイテク企業が集まる本場の米国シリコンバレーほどではないにしろ、白浜が”シラコンバレー”としてウィズコロナ時代の成功モデルを目指す。

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