精神的に「しんどい状態」のときは専門家によるケアを 8月の自殺者は前年比15%超増加<メンタルケア・前編>

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

繰り返しますが、自殺の原因というのは、ひとつではなく、様々な出来事が複雑に絡み合っているでしょうし、究極的には、ご本人にしか分からない、あるいは、ご本人すら分からないということも、あるだろうと思います。そうしたことを踏まえた上で、下記のデータをご覧になってください。

自殺の原因・動機は、年齢層によって異なりますが、全年齢層で見ると、(1)健康問題(39.9%)、(2)経済・生活問題(13.1%)、(3)家族問題(12.1%)、(4)勤務問題(7.7%)、(5)男女問題(2.7%)、(6)その他(4.1%)、(7)不詳(20.3%)となっています(厚生労働省:平成30年)。

倒産・失業などに対する経済・雇用対策、経済的困窮へのきめ細やかな支援、子育て・介護・DV被害者等へのサポート、学校でのいじめ対策、医療現場や地域社会でのサポート等々、多様なアプローチが必要となります。

そして、ここで留意が必要なのは、「健康問題」は、例えば、「うつ病の影響で自殺した」と判断された場合には、基本的にはここに分類されるわけですが、しかし、厳密にいえば、「うつ病だから自殺した」のではなく、「他の要因がうつ病を引き起こし、うつ病という経過を辿って、自殺という結果に至った」のだということです。

そして、WHOによれば、自殺既遂者の90%が精神疾患を持ち、また60%がその際に抑うつ状態であったと推定されています。すなわち、自殺を遂行する方は、その時点において、なんらかの形で精神的な疾患の病名の付く状態にある、ということです。

ここで大切なのは、原因はなんであれ、人が死を考えるような「しんどい状態」にある場合に、もちろん、その根本的要因を緩和することが必要になるわけですが、その人を死なせないためには、取り急ぎ、その「しんどい状態」にあるメンタルをケアすることが急務だということです。

ご家族にも、友人にも悩みを明かせない、という方もいるでしょう。あるいは、受け手側も、打ち明けられても、どうしてあげたらよいか分からない、という方も多いでしょう。ここで、登場するのが、「非常につらい状態にある人を、どう対応したら救えるか」をトレーニングしてきた精神医療やケアの専門家たちです。

しかし、我が国においては、日本ではまだまだ精神科受診やカウンセリングを受けることへのハードルが高く、人の目を気にしなければならない、そのことを家族や職場にも言えない、あるいは、それ故に、結局ケアを受けるに至らない、ということも多いと思います。けれど、家族や友人に相談することに抵抗がある人も、むしろ、専門家である赤の他人であるからこそ、話しやすい、受け入れやすい、ということもありますし、何よりも、専門的なケアを受けることによって、精神状態が最悪を脱することができる可能性があります。クリニックや各種相談窓口に、まずは、連絡をしてみていただきたいと思います。

【相談窓口】
・こころの健康相談統一ダイヤル 電話番号0570-064-556
・よりそいホットライン フリーダイヤル0120-279-338
・いのちの電話 電話番号0570-783-556、フリーダイヤル0120-783-556
・チャイルドライン(18歳まで) フリーダイヤル0120-99-7777
・子供のSOS フリーダイヤル0120-0-78310

【資料出典】
WHO Preventing Suicide: a global imperative
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/131056/9789241564779_eng.pdf?sequence=1

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