感染者ゼロの野外フェスはいかにして実現したか 試行錯誤の感染対策公開「共有して来年へ」

黒川 裕生 黒川 裕生

8月29、30日に大阪・泉大津フェニックスで開催され、コロナ禍における音楽フェスの可能性を示す試みとして大きな注目を集めた野外ロックフェス「RUSH BALL(ラッシュボール)」から1カ月。国内外の大半のフェスが延期や中止を余儀なくされる中、どのような形で実現に至ったのかを記録した「実施報告書」が、公式サイトで公開されている。通常は一般公開する資料ではないが、過去に例のない感染予防対策のノウハウが盛り込まれているため、主催者が「みんなで考えていきたい」との思いを込めてオープンにしたという。

「屋外イベントは上限5000人」という国の指針に従い、例年はキャパ2万人のところを初日は5000人、2日目は3000人という参加者数で開催された今回のラッシュボール。ステージ前方のスタンディングエリアに1m間隔でネットを設置するなどの厳戒態勢で臨み、感染者ゼロを達成したことで、多くの音楽関係者らを奮い立たせた。

開催後2週間が経過してから公開された報告書は随時更新中で、9月29日現在はバージョン2。「イベント概要」「入場の流れ」「会場」「アーティスト対応」「アクセスに関して」の主に5項目についてどのような対策を講じたのかを、写真を交えながら紹介している。

例えば「入場の流れ」では、1次ゲートでWeb問診票の提出と検温、消毒、電子チケットのチェック、手荷物検査を行い、続く2次ゲートで電子チケットのもぎりと大阪府のコロナ追跡システムへの登録確認をしたことを記載。「Web問診票などの認識も悪く入場はスムーズではなかった」という反省点にも言及している。

「会場」の項目では、その徹底ぶりがSNSなどでも話題になったスタンディングエリアの工夫を紹介。最大2500人を収容するエリアに1m間隔でグリーンネットを設置し、結んだリボンで立ち位置を指定したことや、参加者に「マスク着用」「基本歌わない」「大声での発生はしない」といったルールを求めたことを記した。また飲食店は通常25店舗のところを10店舗に減らし、キャッシュレス支払いを推奨。店舗間のスペース、アクリル板越しの接客、アルコール販売の禁止などの留意点も列記している。

この他、2日間で計19組が出演したアーティストへの対応として、ステージマイクなどの持ち込みを求めたほか、随行スタッフを少人数にすること、本番終了後はなるべく早く会場を出ることなどを徹底した。会場アクセスについては、バスの臨時便を設けることで、シャトルバス利用者が駅前などに滞留しないよう計画した、としている。

主催者は「ウイルスという見えないものと対峙する時、1人では進められない、2者では成立しない、三つ巴(参加者全員)で目標をもって安心を得ていかなければならないと実感しました」「2021年には『去年はあんなことがあったなあ』と笑って振り返りながら、全国各地でまた以前のように野外フェスが開催されることを切に願っています」とコメント。近く、協力会社の一覧やさらに細かい数字などを盛り込んだバージョン3を公開するという。

10月6日深夜には、読売テレビ(関西ローカル)で特番が放送される予定。

◾️ラッシュボール公式サイト https://www.rushball.com/

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