ダイコンで精巧に再現したカセットテープがSNS上で注目を集めています。作者は東京でアーティスト活動を行う星川あさこさん。完成後にはマイタケやズッキーニと一緒に煮て食べたというから驚きます。なぜダイコンでカセットテープを? 星川さんに聞きました。
きっかけは青果専用の結束テープ
――「ダイコンでカセットテープを作ろう」と思い立ったきっかけを教えてください。
「もともとカセットテープで発表されている音楽が好きで、いろいろな新しい音楽を探すために『やさいテープ』という名前のツイッターのサブアカウントを持っていました。当時、ホームセンターで購入した『新鮮やさい』と書かれた農業用の野菜テープが好きで、それで『やさいテープ』というアカウント名にしていたのですが、だったら野菜でテープをつくるのが自然な流れだなと思って。サイズ的にもいちばんやりやすいダイコンでカセットテープをつくろうと思いました」
のっけから話はカセットテープから野菜テープに飛躍します。野菜テープとは、ホウレンソウやネギ、キャベツなど野菜を束ねるための青果専用の結束テープのこと。「兵庫県産」「新鮮やさい」などと印刷された青地に白文字のテープと聞くとピンとくる人も多いのではないでしょうか。
――カセットテープと野菜テープ。テープつながりというわけですね。
「そうです。テープつながり、その通りです」
――制作手順を教えてください。
「カセットテープのサイズや各部分のいろいろなサイズをすべて測って、厚めの紙に書きました。それに合わせてダイコンを切って、そこで厚みを半分にしました。穴になっている部分は切り抜き、中を開いてリールと巻かれたテープ状のものがはさめるようにし、それらをつくってはめこみました」
「かかった時間は半日ほどだと思います。細かかったですが、やるべきことと思っていたので迷いはなかったです」
写真を拡大すると、カセットテープ内部のリールや磁気テープまで再現していることが分かります。お見事です。
――マイタケやズッキーニを添えた調理写真もありますね。お味はいかがでしたか。
「かつおとこんぶのだしと薄口醤油で味付けして煮たのですが、食べたときは酔っぱらっていてよく覚えていません」
5年前の投稿が突如バズった
「きのこ作家」の肩書も持つ星川さん。これまでダイコンやパプリカ、キュウリなどを使ってキノコを表現した作品を制作。約6年前からはキャラクター「きのこの精」も販売します。
今年6月には日本橋三越本店の「梅津庸一キュレーション展 フル・フロンタル 裸のサーキュレイター」に参加。7月には個展「ファンタジーホスピタル」を開催しました。今後もグループ展への参加や音楽イベントの企画などが予定されています。「絵や立体などで直接的でない表現をしていきたいと思います」(星川さん)。
――ところで、インスタグラムに投稿したのは2015年。2020年9月に突如、ツイッターで再注目されました。
「わたしが名古屋で活動していた時期にたいへんお世話になっていた方が、このカセットテープのことを思い出してインスタグラムでリポスト(再投稿)してくださって。その後、ツイッターで広めてくれた方がいました。でもきっとこれ(ダイコンでカセットテープ制作)は熱意さえあったら誰にでもできるようなことだと思うので、反応してくださった方々に感謝しています」
そろそろ煮物やお鍋が恋しくなる季節。今年は野菜アートにチャレンジしてみるのはいかがでしょうか。