もちもちの太いフォルムと独特の柔らかな食感で、三重県伊勢市を中心に愛される伊勢うどん。
今SNS上ではこの伊勢うどんの食べ方に関する「マナー」が話題になっている。
件の「マナー」は訪日外国人向け観光情報サービス「LIVE JAPAN PERFECT GUIDE」に掲載された「伊勢神宮参拝とセットで楽しむ。おかげ横丁の名物グルメ5選」(2020年4月6日公開)という記事中で紹介されたもの。
「伊勢うどんは、つゆにしっかり絡めて食べるのが基本。食べ終わったときに、つゆも一緒になくなっているのが、伊勢うどんの正しい食べ方とされています。」
という表現からはたしかにこのように食べることを食べる側に要求しようとする意図を感じなくもない。
これに対しSNS上では料理作家のじろまるいずみさんを中心とした大きな反発の声があがっているのだが、果たして伊勢うどんの食べ方にマナーは存在するのだろうか?
料理作家じろまるいずみさんのツイート
「伊勢うどんに「正しい食べ方」なんて無いわ。よく混ぜると美味しいよと言えばいいだけなのに、どうしてこういうマナーを新たに創造しちゃうの。」
伊勢うどんの製造メーカー、株式会社みなみ製麺の浜口さんにお話をうかがってみた。
中将タカノリ(以下「中将」):「食べ終わったときに、つゆも一緒になくなっている」という伊勢うどんマナーは実際に存在するのでしょうか?
浜口:ございません。
中将:やっぱり……でもこういうことって地元の方でないとわからないので、ついつい信じてしまいがちですよね。浜口さんはこの「マナー」についてどう感じておられますか?
浜口:「伊勢うどんを食べた方々が幸せや楽しさを感じていただく」というのが私たちの目的です。それを達成するために特にこれといったマナーは必要ではないと考えております。伊勢うどんのファンの方もそうでない方も、良く分からないマナーは気にしないでもらいたいです。
中将:伊勢うどんはもともと庶民の食べ物として誕生したと聞きますが、マナーや流儀が生まれるような背景はあるのでしょうか?
浜口:ございません。さきほどの言葉と重複してしまいますが、伊勢うどんは食べる方がお好きなように食べていただくものです。
中将:浜口さんは伊勢うどんをどのようなものだと思われていますか?
浜口:伊勢うどんと言えば黒いタレと味わうのが一般的ですが、他の食べ方もあるのかなと思います。弊社のTwitterアカウントでもバターを入れたりカレーうどんにしたりと、新たな食べ方を提案させていただいています。
皆さまも色々な形で伊勢うどんを楽しんで頂ければ幸いです。おすすめの組み合わせがあれば是非教えて下さい。
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▽株式会社みなみ製麺
1958年創業
「私たちは全国にこだわりの伊勢うどんをお届けしております」
所在地:三重県伊勢市村松町1360−21
公式サイト:https://iseudon.net
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ご当地グルメにマナーがあると言われると「そういうものか」と信じてしまいがちだが、そういう「マナー」の大半はごく一部の偏った人が提唱しているだけだったり、外部の人がメディア等に紹介する際に面白おかしく付加している場合がほとんど。少なくとも伊勢うどんに関してはみなみ製麺の浜口さんがおっしゃるように、好きなように楽しんで食べるのが良いだろう。
僕はこれまで「ZOOMの上座下座」、「葬祭は黒マスク」、「金属製の名刺入れはNG」などさまざまな珍マナーを紹介、批判してきたが、こういった必要のない「マナー」が次々生まれるのは日本社会が抱える一つの病理だと感じている。長くてもせいぜい100年の人生、自分の思ったように自由に生きたいものだ。