法律上の結婚(婚姻)は、役所に婚姻届けを出せば成立する。でも、やはり人生最大のセレモニーとして、式を挙げるカップルは多い。そして結婚に関する用語もまた多い。聞き慣れているけれど、じつはよく理解してないであろう用語について、元ブライダルスタッフのKさんに聞いた。
式の形式には仏前・神前・キリスト教式・人前があるけれど…
ひと口に「結婚式」といっても、さまざまなやり方がある。
「日本でよく行われているのは仏前式、神前式、キリスト教式、人前式の4つでしょうね」
それぞれ、どのような違いがあるのだろうか。
「仏前式は、代々信仰している宗派の寺院本堂で挙式します。式の進行は宗派によって若干の違いがあるものの、共通しているところも多いです」
一度結婚した男女は、来世でも縁が結ばれるという。だから仏前式では、来世までの結びつきを仏の前で誓い、祖先にも結婚の報告をする。
「神前式は神道に則った挙式で、神に対して結婚の誓いをします」
その始まりは、明治33年までさかのぼる。この年、皇太子・嘉仁様(後の大正天皇)がご結婚された。その翌年に日比谷大神宮(現、東京大神宮)で神前結婚式が行われたことが、神前式の始まりとされている。
民間には昭和20年代に入ってから広く普及し、以後しばらくは結婚式の定番となった。やがてキリスト教式に人気を奪われたが、最近ではまた神前式を行うカップルが増えつつあるという。
「ではキリスト教式ですが、教会で挙式するには条件があります」
教会で結婚式を挙げることができるのは、本来は信者に限られる。ところが日本では特定の信仰をもっていなくても、教会での挙式を希望するカップルが多い。そこで、式を挙げる前に日程を設けて「結婚講座」を受講することを条件に、挙式を認める教会がある。
講座の細かい内容や日程は教会によって異なるが、おおむね3日間ていど、キリスト教の基礎、結婚や誓約の意味などを理解してもらうカリキュラムが組まれているようだ。受講はもちろん有料である。
「それでも、1人1万円もかからないです」
尚、遠方に住んでいて通うのが大変というカップルには、通信講座を用意している教会もある。
ホテルや式場のチャペルで挙式する場合には、結婚講座はない。
「人前式は、文字通り参列者の前で結婚を了承してもらう結婚式です」
決まった形式がないため、カップルの独自性を出しやすく、費用も低く抑えやすいメリットがある。
人前式は「じんぜんしき」と読むのが正しいが、神前式(しんぜんしき)と混同されやすいことから「ひとまえしき」と呼ぶことがある。
生ケーキとセレモニーケーキの2種類あるウェディングケーキ
結婚披露宴でおなじみのケーキカットに使用されるケーキには、じつは2種類ある。
「全部食べられる生ケーキと、ナイフが入る部分だけ生ケーキがはめこまれたセレモニーケーキです」
ウェディングケーキの由来は古く、古代ギリシャ時代にまでさかのぼるといわれている。結婚する両家が材料を持ち寄ってケーキを焼いたことから、砂糖が貴重品だった時代に豊かさと幸福の象徴とされた。
「セレモニーケーキ」は、幸福や繁栄の願いが天まで届くようにと高く積み上げられるから、広い披露宴会場では映える。
「生ケーキ」は、ケーキカットのセレモニーが済んだら切り分けられて、招待客に振舞われる。招待された側としては、そのほうが嬉しい。そんな声を反映したかどうかは分からないが、近年のケーキカットセレモニーは生ケーキで行われることが多いという。
最後に余談ながら、「結婚=入籍」ではないという話
おおまかにいうと結婚は、それぞれ親の戸籍に入っていた男女が親の戸籍から抜けて、夫婦の戸籍を“新しくつくる”こと。これを「新戸籍の編製」という。婚姻届けを役所に提出することを指して「私たち入籍しました」と表現するのは誤りだそうだ。