猫にメリットがあることなら何でもお手伝いします! ノラ猫・保護猫専門の『ねこから目線。』

岡部 充代 岡部 充代

 関西圏を中心に活動する『ねこから目線。』はノラ猫・保護猫専門のお手伝い屋さんです。ノラ猫の捕獲、病院への搬送、脱走猫の捜索、里親探し、さらにはTNR(T=Trap/捕獲し、N=Neuter/不妊去勢手術を施し、R=Return/元の場所に戻す)活動や保護・譲渡活動、地域猫活動など実践的な活動に関する勉強会の講師など、間接的にでも猫にメリットがあると考えられることなら何でもお手伝いしてくれます。

 

 代表の小池英梨子さんは個人ボランティア、公益財団法人職員、NPO法人スタッフとして15年近く猫にかかわる活動をしてきました。でも、ボランティアは仕事が休みの日にしかできないし、寄付に頼る非営利活動法人は寄付集めに奔走しなければならない。活動を安定的に継続するには“自走”できる仕組みが必要と考え、2018年に『ねこから目線。』を立ち上げました。最初はひとりで活動していましたが、昨年、梅本幸子さんという信頼できるスタッフが加わり、今は2人体制です。

 ユニークなネーミングは「猫の目線になって猫のためになることをする」というポリシーを表したものでしょうか?

「う~ん、猫の目線にはなりたいけど、なり切れないですよね。むしろ、自分たちが猫の代弁者だと思い込んでしまうと、間違った方向に走る危険があります。例えば、30年前には交通事故や虐待に遭うリスクのあるノラ猫の存在自体がかわいそうだから『安楽死させることが動物愛護だ』と精力的に捕獲と安楽死の活動をしていた大きな団体もありました。さすがに今はそういう相談はありませんが、代わりに『エサをあげているノラ猫を保護してあげたい。でも人馴れしていないし自分の家では飼えないから、どこでもいいからシェルターに引き取ってもらいたい。一生ケージ暮らしでも二度と会えなくても構わない』という依頼はあります。その方も『猫のため』だと言います。

 でも、よくよく話を聞くと、エサをやり続けるのがしんどくなったからとか、エサをあげていたらノラ猫が増えてしまった、自分が罪悪感を持たない方法でどこかに行ってほしい、という本音が見えてくることもあります。価値観の違いかもしれませんが、保護する側に猫を思う真剣な気持ちと準備がなければ、無理な保護は猫にとって拉致監禁でしかない。そういった、猫にとってメリットがあると思えない依頼は受けません。逆に、真剣に猫と向き合って相談してくださる方は、猫初心者であっても全力でサポートします。

 私は、猫の目線にはなり切れないということに自覚的でありたいと思っています。そのうえで、猫にとって一番いいことは何かを常に自問していきたい。『ねこから目線。』という名前には、そういう思いを込めています」(小池さん)

 

 依頼の約7割はノラ猫の捕獲で、開業から2年で1314匹を捕獲してきました(2020年8月25日現在)。捕獲成功率は86.16%に上ります。

 捕獲後、依頼主自身が飼う、または飼う人が決まっているという場合は、飼育環境のチェックを条件に引き受けることにしています。

「捕獲器やキャリーを渡して終わりにすると、その後どこに捨てに行かれるかも分からないし、もしかすると虐待目的かもしれない。自分がヤバイことをしている自覚がある人は、その時点で断ってくるのですが、無自覚な人は家に招き入れてくれて、でもその家が多頭飼育崩壊のようになっている場合もあるんです」(小池さん)

 猫にとってデメリットになることは、絶対に避けなければいけません。

 

 料金体系はシンプルで1時間3000円。30分ごとに1500円プラスされ、その他には出張費の設定があるだけです(里親探しのお手伝いや講師については別途規定あり)。倣ったのは町の便利屋さん。同様の活動をしているところは他になく、参考にしようがなかったからです。

「関東や関西では需要があると思うんですけどね。不妊手術を低価格で、しかも1日に10匹以上できる病院さんや、触れないようなノラ猫の診察でも果敢に受けてくださる病院さんが地域にないと成り立ちませんが、関西には複数あります。やりたいという人がいれば、例えばうちで1か月経験して、ノウハウを持って設立してほしい。生活リズムがぐちゃぐちゃになるのと、多くの収入が見込めるわけではないので、守るべき家族がいる方にはオススメできませんけど(苦笑)」(小池さん)

 

 決して楽な仕事ではありませんが、ケガをしたノラ猫を捕獲して治療が間に合ったときや、里親さんが見つかってお届けしたときなど、喜びを感じる瞬間も多いと言います。そして、人のやさしさに触れたときも…。

『ねこから目線。』には「お釣りは猫に使ってね基金」というのがあるのですが、それは、依頼者が「お釣りは要らないから猫に使って」と多めにくださったとき、そのお金をプールしておいて、治療が必要な猫にカンパするというものです。

「うちはボランティア団体ではありませんから、寄付は集めていません。基本的にはお断わりしているのですが、半ば強引にお釣りを受け取ってくださらない方もいるので、そのお金を茶封筒に入れて、猫のために使わせてもらっています」(小池さん)

 受け入れるかどうかの基準は「猫にとってメリットがあるかどうか」。ただ、その一点です。

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