「月見里」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩氏が日本人の難読名字を紹介します。
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今年は10月1日が中秋の名月。旧暦の8月15日である。古来、8月の満月は「中秋の名月」として、お供えものをして月見をするいう習慣があった。この名月に因んだのが「月見里」という名字である。文字通り「つきみさと」とも読むが、もう1つ独特の読み方がある。
現代、都市部では高層ビルなどが邪魔をして、満月を望むことができないことも多い。こうした高層の建物がない時代、満月をさえぎる可能性がある高いものといえば山だった。そこから、「山がなければ月見がよくできるだろう」ということで、「月見里」と書いて「やまなし」と読む。
静岡市清水区には月見里(やまなし)稲荷があり、現在でもこの付近に多い。もともと静岡市清水区には「山梨」という名字が多く、このうちの一部が「月見里」と漢字を変えたものだろう。少し離れたところにある袋井市の山梨地区も古くは「月見里」と書かれることもあったといい、「月見里=やまなし」というのは、かつては難読ではなかったかもしれない。