「猫でこの病気は初めてみました」。神経科の名医といわれる獣医師から「GM1-ガングリオシドーシス」という病名を聞いたのは、昨年10月のことだった。埼玉県で3人の娘と暮らす母・うしなおさんは2019年5月に、勤め先の近くの用水路で救出した子猫を飼い猫として育てていた。
保護してすぐに獣医師に診てもらったところ、ウイルス感染によって生まれてしまう「小脳低形成」とわかった。さらに「てんかんの気がある。来年はないかもしれない」と余命宣告を受けていた。「ハル」と名付けた子猫は、歩行が困難になり、食事も体を支えていなければ食べれなくなってしまった。
その後、獣医師が通う獣医師会セミナーにハルを連れて行ってもらい 神経科の名医に診てもらったところ、冒頭の病名を告げられた。「ガングリオシドーシス」は遺伝性の病気で猫には珍しく、痩せ細り、全身硬直や痙攣する発作、呼吸障害の症状が出る恐ろしい病気である。産まれて1年ぐらいしか生きられないという。
しかし、ハルは1歳4カ月となった現在も生きている。うしなおさんによると、「ほとんど寝たきりでオムツになりましたが、まだかろうじて食欲はあり体重も2.6キロを維持しています」という。もちろん、うしなおさん一家の懸命な介護がハルの命をつないでいるのは言うまでもない。
一時期てんかんを発症していたが、毎日投与する安定剤のおかげで落ち着いている。目も見えなくなり、耳もほぼ聞こえないが、3週間に1度病院に通院もしている。「この病気は食べられなくなったらおしまいなので、家族全員でハルの好物を工夫して与えています。月1度のシャンプーは娘がしています」(うしなおさん)。ドライヤーで、てんかんを誘発するかもしれないと考え、ペット用の乾燥機を用意したという。
「このまま食欲が落ちず、体重も維持し、元気でいてほしいと家族全員変わらず頑張っています」。うしなおさん一家は一日でも長く生きて欲しい、と難病と闘うハルに毎日寄り添っている。