「故人の給付金なぜもらえない?」遺族から不満の声 「単身者か否か」で対応が異なるワケとは

どなどな探検隊(パートナー記事)

天草 愛理 天草 愛理
給付申請前に世帯主が亡くなったときの取り扱い
給付申請前に世帯主が亡くなったときの取り扱い

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急経済対策で国民1人当たり10万円を配る「特別定額給付金」をめぐり、給付の基準日(4月27日)以降に亡くなった単身者の遺族から「なぜ給付金をもらえないのか」という不満が出ている。給付金の受け取りは、存命中に申請したか、亡くなった人と同一世帯の家族であることが条件になっているためだ。京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」にも、複数の遺族から疑問の声がファクスやLINEで寄せられた。所管する総務省に理由を聞いた。

 疑問を寄せた1人で京都府宇治市に住む男性(70)は、京都市内で独り暮らしをする母がいた。母は、けががきっかけで4年半前から実家近くの病院で生活するようになり、男性は週1回ほど見舞いに行ったり、生活必需品を届けたりして援助してきた。

 母が亡くなったのは5月上旬のこと。男性は「給付の基準日に生きていたから手続きできるはず」と考え、申請書類を待ったが、いっこうに届かない。疑問に思い、京都市役所に問い合わせると、基準日に存命だったとしても、申請前に亡くなった場合は同じ世帯の家族でないと給付されないと説明されたという。

 背景には受給権について国が定めた条件がある。総務省の特別定額給付金室は「給付金は家庭の迅速な支援が目的。世帯単位の給付がスムーズと判断し、世帯主を受給権者とした。法的性格としては市町村と受給権者の民法上の贈与契約に当たるので、申請しないと契約が結ばれない。つまり受給権も発生しない」と説明する。単身者が亡くなった場合でも、既に申請の手続きをしていれば給付金は故人に給付され、相続の対象となるので、遺族ら相続人が受け取れるという。

 だが、申請の開始時期は市町村によってばらつきがあったうえ、申請方法を郵送に一本化した自治体もあった。住む場所や亡くなった時期によって受給の可否が分かれるのは公平性の観点から疑問も残るが、同室は「全国一律に開始していれば、日程が遅くならざるを得なくなり、迅速な支援という目的を達成できなかっただろう」と強調する。

 こうした取り扱いについて、宇治市の男性は「身内が亡くなってもいないうちから、そうした決まりがあることに気付くだろうか。事前にしっかり周知してほしかった。今更10万円が欲しいわけではないが、不信感がある」とこぼす。

 京都市議会は、単身世帯の遺族らの「不公平だ」という声を受け、遺族が給付申請を行うことができるように政府などに求める意見書を全会一致で可決し、安倍晋三首相らに提出した。

▼どなどな探検隊 パートナー協定について
 まいどなニュースはオンデマンド調査報道の充実に向けて、北海道新聞、東奥日報、岩手日報、河北新報、東京新聞、新潟日報、信濃毎日新聞、中日新聞東海本社、福井新聞、京都新聞、神戸新聞、中国新聞、徳島新聞、テレビ西日本、エフエム福岡、琉球新報と連携協定を結んでいます。 「どなどな探検隊」に寄せられる取材リクエストのうち、取材対象地域外に関するものなどは各社と情報を共有。北海道新聞の「みんなで探る ぶんぶん特報班」、 東奥日報の「あなたの声から『フカボリ』取材班」、 岩手日報の「特命記者-あなたの疑問、徹底解明-」、 河北新報の「読者とともに 特別報道室」、 東京新聞の「ニュースあなた発」、 新潟日報の「もっと あなたに―特別報道班」、信濃毎日新聞の「声のチカラ」、 中日新聞東海本社の「Your Scoop みんなの『?』取材班」、福井新聞の「みんなで発掘 ふくい特報班」、 京都新聞の「読者に応える」、神戸新聞の「スクープラボ」、 中国新聞の「こちら編集局です あなたの声から」、 徳島新聞の「あなたとともに~こちら特報班」、 西日本新聞の「あなたの特命取材班」、テレビ西日本の「福岡NEWSファイルCUBE」、 琉球新報の「りゅうちゃんねる~あなたの疑問に応えます」の記事を相互交換し、新聞や自社のウェブサイトに随時掲載します。

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース