新日本プロレスのジュニア戦線で一時代を築き、SWSやUWFインター、ノアなどさまざまな団体で活躍した元プロレスラーの佐野巧真さん(たくま、55)が、京都市の焼肉店「焼肉巧真」店主として第二の人生のリングに立っている。
佐野さんは、新日本の東京ドーム大会2連戦(1月4、5日)で行われた獣神サンダー・ライガーの引退記念タッグ試合に本名の佐野直喜として出場。同期でかつてのライバルとリング上で再会を果たし、2日間に渡ってドームを大いに沸かせた。
ライガーの引退を惜しむ声が飛ぶ中、佐野さん自身はフェイスブックで「今回限りで現役を卒業し“焼肉巧真”のオヤジとして頑張って参ります」とつづり、現役引退を表明した。ノアの3・8横浜文化体育館大会で“卒業セレモニー”が行われる予定だったが、コロナの影響で大会は中止に。ひっそりと36年間のレスラー人生に別れを告げた。
調理場で、佐野さんは鮮やかな包丁さばきを見せていた。セカンドキャリアを意識し、レスラー時代から都内の有名焼肉店で修業。「飲食業をしてみたいという夢もあったし、肉も好きでした。接客も、切り方も。見て覚える感じでした」と振り返る。
都内で焼肉店を開業する予定だったが、京都市で薬局を営んでいた佐野さんの妻の母親が店を閉めることになり、2018年12月に跡地に店を開くことになった。「体力的にしんどいのはプロレスだけど、精神的にはしんどさは一緒かなぁ…。自分でかじ取りをするとなると、ずーっと考えないといけない。仕込み、仕入れ…何も考えない日がない」と店主の顔を見せた。
華々しいセレモニーをしないまま、リングを降りた理由を聞いた。佐野さんは数年前から「これが最後だ」と思い、リングに上がっていたという。東京ドームでのライガーの有終試合2試合出場を終え、ホッとした時に引退を決意。「そうだなあ…と思った。次の試合に向けてはないなあと思い、店に集中した方がええなあと思った」と明かす。
ノアでの卒業式は幻になったが「(ドームでの)試合を終えて、自分のこだわりはない。ライガーの引退試合に出させていただいて、レスラー人生にケジメをつけられたのが良かったと自分では思っている」と言い切る。レスラーから転身した“焼肉巧真のオヤジ”は、客がゼロの日もあったというコロナ禍も乗り切った。
180センチ、110キロの体格は当時のまま。手がデカいのか、普通に盛り付けていても高齢の客から「多いよ!」と怒られることもあるという。京都産の丹波亀岡牛を使った人気の特選リブ芯ステーキ(2980円)やブツ切りレバーのレバブツ(980円)は絶品だ。
選手にも慕われていた佐野さんの人徳もあってか、試合で京都を訪れたレスラーやファンも多数来店。ライガー選手自身や、なぜかライガーの覆面&コスチュームを全身にまとったファンも来たという(何の意味があるのか…)。「京都でプロレスと同じ気持ちで店を営んでいます。ぜひお立ち寄りください」。熱い思いは、レスラー時代と変わらない。
◆焼肉巧真 京都市西京区山田庄田町3―63 水曜と第1・3木曜日が定休日 午後5時~11時 075(382)5529
(まいどなニュース/デイリースポーツ・杉田 康人)