開局38年を迎えた「テレビ大阪」は新たな試みとして、地元大阪の優良素材メーカー「山本化学工業」と連携し「Global Dream Project」を立ち上げた。テレビ局の持つノウハウを活用し、協業して市場を開拓できるパートナーを募集する。その第1弾のお題は「高機能マスクの着用習慣を世界に広げる」こと。一体、なぜ、そんなことを始めたのか?
絶妙のタイミングで両者のタッグ結成が実現したということだろう。既存メディアを取り巻く環境は年々厳しくなっており、2019年の広告費では長年王者だったテレビがついにトップの座から陥落。インターネットに逆転された。テレビ大阪ではこうした流れを受け、新規ビジネスへの取り組みをライバル他局に先駆けて積極的に推進。コーディネーター役を担おうと今回のプロジェクトを立ち上げ、パートナーを模索していた。
一方、「山本化学工業」は高い技術力を持ち、ウェットスーツ素材で世界トップシェアを誇る地元大阪の優良企業。ただ、そんな技術力や商品も広く知られていなければ、ないのと同じだ。そこで同社では自社が持つ“知的財産”を無償で開放し、協業する企業を今月3日から募集している。自社にない強みを持つ企業とパートナーシップを組むことで販路を広げ、市場で素材のシェアを高めるのが狙いだった。
その第1弾として、両者が取り組むのが高機能マスク「ビオラシリーズ」だ。これは新型コロナウイルスの感染拡大を受け、水着用の自社素材を使って開発され、4月から発売。0.5ミリと極薄のゴムを主体とした素材を使用しており、伸縮性があるのが特徴だ。ゴムは通常、薄くカットするのが難しいそうだが、山本化学工業の技術がそれを可能にした。山本富造社長が期待を込めた。
「苦労して取得した“知財”を提供することに否定的な見方もあるでしょう。しかし、自信を持っている技術こそ広くオープンにした方が、結果的に市場が広がると思う。求めるのはグローバルに発信できたり、視野が広く、わたしたちとは発想の違うパートナーとの出会い。高機能素材を、ものづくりが得意な企業に使ってもらって、販路を広げられれば」
確かに、マスク着用習慣は国内では普及しているものの、世界規模では浸透しておらず、まだまだ需要がありそうだ。そこでテレビ大阪がいわば”仲人役”となって、ビジネスをさらに拡大させたい企業や、新商品を開発したい研究者、新ビジネスを立ち上げたい起業家などとのマッチングをプロデュースする。テレビ大阪の増田尚志・デジタル新規事業部長の鼻息も荒い。
「わたしたちは商品の製造はできませんが、開発の企画段階から関わることで、よりよい商品づくりのお役に立てるはず。テレビ局の持つ信頼性、コンテンツ制作力、CMを活用したマーケティングのノウハウなどはビジネスマッチングの分野で力を存分に発揮できると確信しています」
テレビ大阪では今回のプロジェクトをきっかけに、今後も新商品の開発を進めていく考えだ。また、新型コロナウイルスの感染拡大に対応した取り組みにも力を入れ、メディアとしての社会的な責任を果たしたい、としている。
「問い合わせはかなり届いています。スタートアップ系はデザイン、クリエイティブを得意とする分野からの反応がいいですね」と増田さんもニンマリ。なるほど、社運を賭けたとまでは言わないまでもテレビ局という枠を超えた「夢のある」取り組みになりそうだ。
その第1弾「高機能マスクの着用習慣を広げるためのパートナー募集」の応募締め切りは8月31日予定。プロジェクト事務局tvo-biz@tv-osaka.jpまで。