初夏になり、今年もたくさんの野良猫の子猫を見かけるようになりました。猫の繁殖力は非常に強く、次から次へと子猫が誕生するのです。飼い猫も不妊去勢手術をしていなければ妊娠しますが、子猫を遺棄する人もたくさんいます。獣医師の橋本恵莉子さんは、「レスキューを必要としている猫があまりにも多くて、助けたいけど助けられない命がある。猫を助けるには、不妊去勢手術を徹底する必要がある」と言います。
保護しても、保護してもきりがない
――初夏になって猫の出産シーズンが到来しました。そうでなくても多頭飼育崩壊もあり、ボランティアさんはいつも忙しそうですが。
橋本恵莉子獣医師(以下、橋本獣医師) SNSには、子猫のレスキューについて相談されたボランティアや保護団体のブログがあふれています。多頭飼育崩壊で多数の子猫をレスキュー、個人宅で生まれて飼いきれなくなった子猫のレスキュー、誰かに遺棄された子猫のレスキューなど、次から次へと子猫の保護依頼があるのが現状です。レスキューを依頼する投稿も多数見られます。
あるボランティアが、おばあさんがたくさんの猫を飼っているのを発見したとします。おばあさんは、猫たちにエサだけ与えて野良猫だからと不妊手術をしない。当然、次々子猫が産まれてしまいます。その事実を知ったボランティアさんは放っておけないから保護します。また、別の日には公園で捨て猫を発見して保護するといったように、保護しなければならない猫が無数にいて、みんな助けたいけど助けられない状況になっています。
保護された猫は幸運、その裏には
――ボランティアさんや保護団体が把握しきれない猫もいるのでは
橋本獣医師 SOSを求めている猫は、彼らだけではありません。ボランティアさんや保護団体に助けられる猫は幸運です。SOSを求めている猫は他にもたくさんいるでしょう。
――ボランティアさんや保護団体の人は歯がゆい思いをされていますよね。
橋本獣医師 保護活動はずっと続いているのですが、助けられる数はもちろん、肉体的にも経済的にも限界があります。
――個人ボランティアさんをしている辻本麻佐子さんは、精神的にしんどくなることが多いと言っています。
橋本獣医師 地域猫に理解のない人に暴言を浴びせられたり、助けられない子猫がいたり、辛いことのほうが多いけど、それでもかわいそうな猫を減らしたい一心で活動を続けている人が多いのです。
不妊去勢手術は絶対にしなければならない
――ボランティアさんのお気持ちは分かるのですが、状況を改善するにはどうすればいいのでしょうか。
橋本獣医師 猫には、1組の雄雌カップルから、なんと1年で50匹以上の子猫を誕生させる繁殖力があります。放置しておくと子猫たちが成長してカップルになり、再び50匹ずつ子猫が産まれます。その連鎖を食い止め子猫を過剰に増やさないようにするには、もとを絶たなければなりません。蛇口を閉める、不妊去勢手術をしないと解決しないのです。1組の雄雌猫の不妊去勢手術をすることで、将来的に数えきれないくらいたくさんの猫を救うことができるのです。
――飼い猫にも不妊去勢手術が必要でしょうか。
橋本獣医師 飼い猫にも徹底した不妊去勢手術の周知が必要です。みんなで不妊去勢手術の大切さを広めましょう。