大阪府の吉村洋文知事(44)のグッズが爆売れしている。大阪府八尾市の玩具メーカー・ダイワトーイが、Tシャツやマグカップなど吉村グッズを企画。大阪市内の土産物店などで6月1日から販売したところ、発売10日で一部が品切れ。増産が決定するほどの人気商品になった。吉村知事は、版権料なしの無償で商品化を承諾。グッズ収益金の一部は、大阪府の新型コロナウイルス助け合い基金に寄付される。
大阪・道頓堀の土産物店「なにわ名物いちびり庵」では、目抜き通りに面した店頭の特設コーナーで「話題の吉村知事グッズ おひとつどうぞ!」「吉村洋文 推しグッズ」の文字が躍る。吉村知事の顔がプリントされたマグカップ(1000円)やTシャツ(2000円)、缶バッジ(300円・大350円)、プリントキューブ(1800円=いずれも税抜き)などが所狭しと並んでいた。
同店を運営する株式会社せのやの池山幸博ゼネラルマネジャー(47)は「Tシャツが夜にならないと入ってこないんです」と、追加注文にうれしい悲鳴を上げる。コロナの影響で観光客が戻らない中、ふだんは土産物店には目もくれない地元の客が買い求めていくという。「30―40代の男女が多い。せっけんなど地産の土産物も多くあるので、手にとってもらえるきっかけになれば」と話す。
吉村グッズは、多くの鉄道グッズを手がけるダイワトーイの山本和秀社長(62)が企画した。コロナ禍は、駅の土産物店や鉄道博物館などで売られるグッズを主力商品にする同社を直撃。「目を覆う状態。何かつくらないといけない」。そんな矢先、山本社長の娘が、テレビ出演する吉村知事をアイドルを見るように眺めていたことでひらめいたという。
当初は大阪府庁から「前例がない」と難色を示されていたが、吉村知事から秘書を通じて商品化にOKが。しかも肖像権を放棄し、無償で協力したという。山本社長は「土産物店が営業再開されるということで、何かインパクトがあるものを作りたかった。大阪が盛り上がればという思いだけで、政治的意図は一切ありません」と振り返る。アイドルのコンサート会場で売られているようなグッズが出来上がった。
テレビ番組やSNSなどで話題を呼び、マグカップやTシャツは初期生産数が完売。増産に入った。コロナ対策で手腕を発揮し、全国にも名をとどろかせる吉村知事。山本社長は「あくまで大阪にしか置いていない商品として、観光客に購入してもらえれば」と、新たな大阪名物として期待を寄せる。
収益の一部は、医療従事者を支援する大阪府の新型コロナウイルス助け合い基金に寄付される。「悪ノリするつもりはないが、新たなグッズも検討中」と山本社長。府知事のグッズが、地元の土産物店の危機を救うという“大阪モデル”が生まれつつある。