新型コロナウイルスの影響で保育園や幼稚園、小学校の休みが長引き、多くの子どもにとって「いかにおうち時間を過ごすか」は緊急事態宣言の解除後も課題のひとつ。対面で行われる遊びや習い事も制限され、退屈な日々を過ごす子どももいるだろう。そんな中、オンラインで「アート」を学ぶ場が生まれた。その名も「オンライン・こどもアートスクール」だ。
本プロジェクトは、全7回のワークショップ。「Zoom」で開催され、40分間で参加者は1つの作品を仕上げていく。筆者は、4回目のワークショップに参加してみた。用意するのは、ペン、紙、テープのみ。今回の講師は、アーティストの児玉彩さん。「絵をかくじかん」をテーマに、隣にいる家族を描く時間が繰り広げられた。
1. まずは顔を指でなぞってみよう
まずはペンを持たず、一本指を準備し、隣にいる親や兄弟などの顔をなぞる。「耳あった?鼻あった?」と優しく語りかける児玉さんに応えるように、子どもたちはこれから描く対象物の感覚を掴んでいく。
2. 顔を描いてみよう
次は実際にペンと紙を用意し、早速顔を描いていく。
3. 隣の人にインタビューしてみよう
顔の次は、その人の姿。隣にいる人に、『今、何がしたいですか?』と聞き、その答えとなる動作を絵に描く。相手がもし「泳ぎたい」と答えたなら、泳いでいる姿を描く。
4. 描いた人物の周りを彩ろう
人物を描けたら、次は人以外のものも描いていく。もし泳いでいる人の絵を描いたなら、魚を描くのもよし、海を描くのもよし。作品を飾りつけ、完成に近づけていく。
5. 日付を書いたら、完成
「日付を書いておけば、将来大きくなったときにこの絵を見返して、『何歳のとき、こんな絵を描いていたんだな』と思い出すことができますよ」と児玉さんはアドバイスした。
このイベントを運営しているのは、主に展覧会企画などを行っている「TRA-TRAVEL」。アドバイザーとして、子ども向けワークショップを多く実施してきた深沢アート研究所の山添joseph勇さんも参加している。イベント担当者は、「幼児期や小学生の子どもたちは、本来ならば今は刺激や学びをたくさん得る時期。だからこそアーティストと一緒に絵を描いたり、作品を創作したりする時間があれば、と考え企画しました」と話す。
4回目のワークショップでは、40分間というコンパクトな時間の中で、身近なものを用いて絵を描く、という子どもに負担がないプログラムが特徴的だった。「このワークショップでは、最後に『振り返り』『発表会』などはしません。子どもたちが体験を自然に受け止め、無理に言語化せず、そのまま家に持って帰り『こんなことがあったよ』と話す。それが理想的だと考えています」
迎える講師は毎回違い、いずれもアート業界で活躍するアーティストだ。彼らもオフラインの活動を自粛している中で、「とてもピュアな気持ちで取り組んでいる」という。「彼らは仕事が中止や延期になってもなお、おもしろいことがしたい、とウズウズしています。だからアーティストと子どものマッチングの場にもなっていますね」
ワークショップをオンラインで行うメリットは、「さまざまな地域に住み、各々の状況にある子どもたちが、顔を合わせられる点です」。「これからは、言語の壁を超えたワークショップもしたいです。他の言葉を話す人が同じオンライン上にいる、それだけで子どもたちにとって魅力的なことだと思います」。このワークショップは、TRA-TRAVELにとって「まだまだ実験段階」。「7回の開催の中で、オンライン上でのワークショップのあり方や、子どもたちの反応を探っていきます。そして『新しい日常』に適応し、継続できるような形にしていきたいです」
■TRA-TRAVEL https://www.facebook.com/TRA.TRAVEL.ART/
■アドバイザリー:山添joseph勇(深沢アート研究所) http://www.hukalabo.com/
■オンライン・こどもアートスクール https://www.facebook.com/online.kodomo.art.school/